適当な日常を綴る’

明朗・潑溂・無邪気なブログ

東京物語 ★★★★★★★★★☆

趣向を変えて古めの邦画も見てみようということで適当に海外でも評判の高いらしいこれ。60年前の映画か…


あらすじは有名だし長くなるので省略して、途中まで「起伏もないし何かが起こるわけでもないし、何でそんなに評価高いんだ…?」と思いながら観ていたのですが、観ていくうちに色々なことを思うようになっていき
最後まで観ると、自分なりに評価が高い理由が分かった気がしました。まず自分の好みとして、創作物は「わかりやすい主題があって、かつストーリーそのものも明確に面白い」ものが好きなんですが、この作品はそうではない。
普通の家族に起こる普通の出来事を、淡々と描いていくんですよね。薄れゆく家族の絆とか、老いとか、孤独とか、身内の不幸とか…その辺りは仰々しい「主題」というよりはあくまでも現実に有り得る出来事でしかないわけです。
しかし、だからこそ、その普遍性があらゆる人の共感を呼ぶ、そういうことなんだと思います。両親や祖父母が実際こんな感じで都会まで出てきたとして、果たして仕事を放り出して構ってあげる余裕はあるのだろうか、とか
自分も親に心配をかけてはいないだろうか、とか、色々考えさせられましたね。最後に紀子が「私、ずるいんです」という名シーンにしても、あれほど老夫婦に尽くしてあげた紀子でさえ、真に“裏表のない素敵な人”では
もちろんないわけですよね。家族があって、生活があるわけで、そこと折り合いを付けながら生きていかなければいけない。敢えて聖人君子でなく、現実味のあるキャラクターにしてあるところがまた共感できるというか…


キャストは笠智衆の人柄の良さそうな役柄がとても好きで、親近感を持って観ていたのですが、それと同じくらい原節子の美人さにはハッとさせられました。ものすごい美貌ですよね。他の作品もいくつか観てみたくなりました。
何というか、自分を映す鏡のような作品だと感じました。これからまた人生経験を積んで、何年も経った後にまた観ると、違う感想を持つかもしれないですね。それまでに人間的に成長できていればいいんですけど…