適当な日常を綴る’

明朗・潑溂・無邪気なブログ

若おかみは小学生! ★★★★★★★★★★

少し前から口コミでかなりの名作、という評判を聞いて、子供向けアニメでしょ…?と思ってはいたのですが、スタッフも豪華だし、アニメオタクとしては観ておかないと、と思ったので朝一で映画館へ。

雨だったのでガラガラかな?と思いきや家族連れが多かったです。その中に混ざる二十代男性。隣も普通に家族連れでした。たまに僕の同類みたいな人もいましたけど…。

一応、アニメの方は少し見ていたのですが、ほぼ前提知識はゼロでした。…なんですが、思わず涙するほど感動してしまいました。基本的に創作物で「泣く」ということがないのですが

それだけものすごいエネルギーを持った作品だったんですよね。両親を失った主人公・おっこの悲しみが、何度となく夢の中に出てくる両親の回想シーンをずっと見ているうちにいつしか

視聴者である観客自身とシンクロし、共有していく。同じく幽霊たちへの親愛の情も芽生えるし、様々な難しいお客様を通して成長するおっこ自身についても、自然と追体験している、と。

そうして、おっこと同じように観客も花の湯温泉での1年を過ごしたからこそ、ラストの辛い展開からの「私はこの春の屋の若おかみです」が与えるカタルシスたるや…。すごい衝撃でした。

この映画の要諦は「自分探し」という、自我が肥大化した挙句の迷妄期の話では無く、その先にある「滅私」或いは仏教の「人の形成は五蘊の関係性に依る」、マルクスの言う「上部構造は(人の意識)は下部構造(その時の社会)が創る」を如何に描くかにある。(公式サイトの監督コメントより)

公式サイトの監督コメントにあるように(なんかすごいこと書いてんな)、おっこは自我の強い子ではないんですよね。パンフレットにも書いてありましたが、自分を引っ込め、他人の為に尽くしてあげられる子。
「ありがとうを食べて生きていけ」とかいうことではなく、人のために尽くすことで、親を亡くし、転校してきたおっこにも社会での居場所ができていく。そういう前向きなメッセージが根底にあったんでしょうね。

創作物を共感ベースで鑑賞する自分とぴったり波長の合う作品であったのは事実ですが、それを差し引いても、作画レベル、全年齢が楽しめるストーリー、共に一級品。今年1番の傑作でした。観に行ってよかった。