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田園に死す ★★★★★★★☆☆☆

田園に死す

田園に死す


「賽の河原に集まりし、水子、間引き子、めくらの子」


アングラ演劇で有名な寺山修司の監督作品。終始狂気を孕んだ異様な世界観で、作家個人の独創性がものすごく出ていました。単純に言うと怖い。
母と二人、青森県の恐山の近くの村で暮らしていた中学生の「私」が、隣の家に住む人妻と2人で村を出ていこうとして線路を歩く…というところまでが「私」が制作した劇中劇、という設定で
「私」が試写会を終えて家に帰ってくると、少年時代の「私」が家の前にいて、本当の少年時代のことを語り始める…。というメタ的な展開。まあ、ストーリーはあってないようなものですね。


極彩色の目を引く色使い、空気女とか狂ったサーカスの面々、壁一面の柱時計、少年時代の私を襲う人妻…。理解するような作品でもないんでしょうけど、生理的嫌悪感を覚えたのは確かですね。
音楽をJ・A・シーザーが担当していたので、『少女革命ウテナ』に親しいものを感じました。『ウテナ』もそうですが、話の流れがわかりにくいからといって、主題がわかりにくいか、というと
必ずしもそうではない。今作だと、つまりは故郷、そして母親を捨てきれない「私」を描いているのは分かりやすいんですよね。作者の自伝的作品でもあるらしいので生い立ちを調べたら尚更。
ただ、どう表現するか、というところに寺山修司の非凡な才能が発揮されている。消化の良い作品が好きな人には勧められないですが、インパクトは相当なものなので一見の価値はあるかも。