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飢餓海峡 ★★★★★★★★☆☆

飢餓海峡

飢餓海峡



飢餓海峡。それは日本のどこにでもみられる海峡である。その底流に我々は、貧しい善意に満ちた人間の、ドロドロした愛と憎しみを見ることができる。」


実際に起こった青函連絡船の遭難事件と、北海道で起こった大火を元にしたサスペンス。北海道で強盗殺人事件が起こり、その日に起こった連絡船の遭難事件には、乗客名簿にない謎の死体。
数日後、青森の娼妓・八重が出会った、犬飼と名乗る男は大金を八重に渡して姿を消してしまう。八重はその恩を忘れずに生き、10年後、新聞で犬飼と似た顔の男・樽見の写真を見つけて…。


強盗殺人をした男が仲間を殺して偽装した、というだけの話かな、と思って見ていたら、終盤で犬飼の口から真相が語られる(まあ、何が真実かは最後までぼかされているのですが)。
作品のタイトルが示す通り、この悲しい事件の根底にあるのは「飢餓」なんですよね。これは字義通りの物質的な「飢餓」と、それによって生じる心の「飢餓」の2つを意味している。


特に、犬飼が純粋に思ってくれていた八重を信じることができなかったがために起きた悲劇。そして、10年前に事件が解決できず出世コースを外された弓坂刑事の悲哀。
これらの事情が重なり合って、あの衝撃的なオチ(まあベタだけど)がある。海原を映しながら、仏教がモチーフらしい荘厳な音楽で終わるラストシーンは強烈に印象に残りました。


当時の捜査の精度を考えたら、10年前の現場に残っていた爪しか物的証拠がないのに、犯人だと決めつけるのおかしいやろ、みたいな、単なるサスペンスとしては粗のある作品ではありますが
貧困から来る人間の業を描いたところに妙味があるのかな、と思うので、整合性を云々するのは野暮なのかな。あと三國連太郎の関西弁が上手すぎる。関西出身なのかと思ったら違うし…。