適当な日常を綴る’

万年五月病患者が惰性で書き続けるブログ

二ノ国 ★★★★★★☆☆☆☆

終バスまで無限にゲーセンでクイズ!…の予定でしたが、結局飽きてしまったので、併設の映画館で何か観ようと思い、ちょうど良い時間にやっていたこれにしました。



映画「二ノ国」30秒予告編


愛する人を救うために<命>を選べ。」


ミュウツーの逆襲』を観に行った時に見た予告で、このキャッチコピーが何となく頭に残っていました。…が、このキャッチコピー、実は完全なブラフだった、という衝撃の展開。


車椅子で暮らしている秀才のユウ、バスケ部で女性とにも人気のあるハル、そしてハルの彼女であるコトナ。幼馴染である3人。ある日急に異世界二ノ国」に転生してしまう。
現実世界である「一ノ国」と、異世界である「二ノ国」は命が繋がっていて、ニノ国の姫・アーシャの命を救えば、その代わりに現実でアーシャに似ているコトナが死んでしまう。

だから「命を選べ」というキャッチコピーが出てくる。主人公のユウとハルは「コトナを救うために、アーシャ姫を殺すのか?」という究極の選択を迫られる…という流れなんですが
途中から「いや、命が繋がってるんだから、片方殺したらもう一方も死ぬんじゃない?」という当然の疑問が出てくるわけで。
ユウがその疑問をハルに投げかけようとしても「お前の妄想には付き合いきれない!」と相手にしないんですよね。彼女のコトナがそのせいで急に余命3ヶ月だからな…。
まあ、ユウの方も、その根拠が、子供の頃入院していた病院にいた「ワシは異世界から来たんじゃ」みたいなことを言っていたおじいちゃんの言葉を信じているから、という
「確かにこれ言われてもちょっとね…」みたいな感じだったので仕方ない面はありますが。とにかく、終始ハルのアホさ加減にイライラする映画でしたね。


例えば序盤、謎の刺客に刺されて意識不明になったコトナのところに駆けつけ、ユウに「お前がいながらなんでこんなことになったんだ!」みたいなことを詰るシーン。
「いや、お前さっきまで二人でデートしてたやん」っていう。それで別れた後に彼女が襲われ、着信にも気づかなくて来るのが遅れたのに、車椅子の身ながら必死にコトナを探した
親友に対してその言い草はヤバくない?って思ってしまいました。他にも、明らかに悪役って分かりそうな怪しい暗黒騎士に唆されるとか色々あったけどまあいいか。


…まあ、ゆうて高校生だし、彼女が急に余命数ヶ月って言われて、その原因が異世界の姫にある、って言われてしまえば、信じてしまうのも仕方ないかな、と思わなくはないんですよね。
この作品がマズいところは彼らのキャラクター性ではなくて、展開の強引さにある。中盤、ニノ国の王が2人を疑って、投獄して取り調べようとするシーン。
ユウが急に「分かったぞ。ニノ国に来たきっかけは交通事故だったから、一の国(現実)に帰るには命の危機が必要。あの炎の中に飛び込もう!」とか言い出す。
思わず座席で「…は?」って言いそうになってしまった。そんな根拠ゼロの仮説で命を張るの頭おかしい…。ハルも普通に同意するし。ここでまず置いていかれてしまった。


ユウがアーシャ姫と交流を深めていき、姫に惹かれていくのはまあ悪くはないとは思ったんですよね。ただそれだけの関係性で姫のために命を張れるの?とも思ったのは事実なんですが。
それより、姫が、コトナと自分のどちらを救うかユウが悩んでいる、と知った時、急に「あなたは大切なもののために全てを賭ける覚悟がないのですか。コトナさんのことが大切なら
今すぐその剣で私を殺してコトナさんを救いなさい!どうせ一度はあなたに助けられた命ですから!」とか言い出したのはマジで引いてしまいました。
顔も知らない異世界の人間を救いたい、なんて理由のために、自分の命を差し出す人間とかおらんやろ…。展開に言わされている感がありすぎでしたね。もう少しなんとかならんかったのか。


黒幕も怪しすぎてこいつは逆に黒幕じゃないだろ、と思ってたら普通にラスボスで、まあそれはいいんですけど、彼は実は国王の兄であり、かつて国外追放されながら、妻と出会い
幸せに過ごしていたところ、今度は国王に国ごと攻め滅ぼされて全てを失い、強い憎しみを持つようになった。…とかいうめちゃ重い設定を喋る喋る。今までそんな描写なかったけど…。


そして、伝説の剣が出てきたり色々あって、最後はユウとハルの連携プレーで見事に敵を倒す。めでたしめでたし…、なのか?よく考えたら、国外追放した挙げ句、国を攻め滅ぼすという
外道なことをしたからこそ怒り、国の征服を狙っていたわけで。それを普通に倒して終わり!では、悲劇の繰り返しを生むだけですよね??敵側の事情出しておいてそれ?という疑問。


…で、最後。元の世界にユウとハルが戻ろうとすると、途中でユウが突然「ニノ国に残る」とか言い始め、現実世界に一人で戻ったハルは、奇跡的に回復したコトナと共に幸せに暮らす。
ユウは二ノ国でアーシャ姫と幸せに暮らす。めでたしめでたし。…となったところで、ハルが「…そうか、わかったぞ。ユウの正体が。お前は俺だったんだ」とか言い始める。
ユウとハルは同一人物で、ユウが二ノ国、ハルが一ノ国の住人だった、と。息がピッタリ合うのもそういうことだったんだと。ラスト5分でこの重大な設定が明かされてエンドロール。
…伏線が全く無かったわけではないですが、今まで一ノ国とニの国の同一人物は姿形も似ている、って設定を再三出してたのでミスリードだな、と。まあキャッチコピーからミスリードですが。



個人的に、王道ファンタジー作品に大切なのは「没入感」ではないかと思っています。その点今作は、あまりに不自然な言動とか、説明的な台詞が多いとか、尺の都合上仕方ないとはいえ
キャラの掘り下げが不十分で物語についていきにくいとか、とにかく没入感が削がれる描写が多かった。RPGを高々2時間の尺で映像化する、というのが土台無理なのかもしれませんが
それにしても、遊んでいれば勝手に愛着が湧いてきて背景も想像できるゲームとは違い、映画であれば、キャラのバックボーンも、感情移入も、2時間で描写して入れ込まなければいけない。
ゲームを映画化するということがいかに難しいか、という象徴的な作品なのではないかと。脇役が実はゲームに登場する重要キャラとか、ファンサービスもあったらしいだけに尚更そう思います。


芸能人の声優起用はそこまで気になりませんでしたし(知ってる声の俳優さんばかりだというのもありますが)、脇役の声優は業界トップクラスの人たちばかり。久石譲さんの音楽も良かった。
それでも、不自然な展開が多すぎて、物語を咀嚼する妨げになってしまう。噛み合わない作品だなあ、というのが率直な感想です。粗が目につきすぎて、王道な物語を素直に楽しめない。


あと、足が不自由なユウが、二ノ国では普通に歩けるようになっていて、最後はアーシャ姫と幸せに暮らす、というオチ。そもそも、ユウの足が不自由な設定って必要だったんでしょうか?
最近流行りのポリコレ要素を作品に入れ込む、というあまり好きではない風潮の現れなのかもしれませんが、現実世界では障害があるけど、異世界なら治ってるからそっちでお幸せに、って
考えようによっては、障害者を否定しているのでは。結論がああなったことで、むしろポリコレ的には駄目なメッセージを内包してしまっているようにも見えました。…自然に描くって難しい。


映画「二ノ国」 公式アートブック

映画「二ノ国」 公式アートブック