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サイラス・マーナー

サイラス・マーナ― (光文社古典新訳文庫)

サイラス・マーナ― (光文社古典新訳文庫)


2019年の読書量、多分20冊くらいになるのかな。…まあ、半分はライトノベルなんですけど、これでも、社会人になってから一番本を読んだ1年だったのは間違いない。
今年も引き続き、コンスタントに書物と触れ合えたら良いですね。…ということで、今年1冊目はこれ。1ヶ月以上積んでたんですが、正月休みにようやく読み終えました。

友人の裏切りで濡れ衣を着せられ、知り合いが誰もいない片田舎に引っ越し、機織りとして交友を絶って一人で暮らす主人公のマーナー。
機織りで得た金貨を毎日眺めることだけが生き甲斐だった彼のもとに、ある日地主の放蕩息子が忍び込み、金貨を盗んでしまう。再び生きる意味を失った彼の元に、舞い込んできたものとは…。


あらすじはこんな感じ。正直、序盤はストーリーが陰気であまり面白くないなあ、と思いながら読み進めていました。
マーナーとゴッドフリーの2人の物語が交互に進行していく、という構成で、中盤の舞踏会のシーンで2人の物語が交差する。そこからは一気に最後まで読み終わりました。


全てを失って人生に絶望した男を救ったのは「子供」と「愛」だった、というお話なんですけど、実際、おとぎ話だよなー。
エピーを鎹にして村に溶け込んでいくマーナーの様子は読んでいると微笑ましくもあり、羨ましくもあり。寓話としてはとてもよくできていると思いました。


解説を読みながら、この小説が聖書の内容をいくつか引いていると知って腑に落ちた面もあり。
籤引きで盗人が誰か占うというの、かなり迷信的では…と思いながら読んでたけど、旧約聖書から取っていた、とか。無知なのは自分の方であった。
19世紀イギリスの価値観から考えたたら、ナンシーやプリシラがかなり進歩的な女性に見えるのも興味深いところ。ゴッドフリーはマーナーを援助し続けることが贖罪、って理解で良いのかな…。


派手さはないですが、センチメンタルでありながら2人の物語が最後に交わるというテクニカルな構成が面白く、割と好みな作品でした。今年も古典に少しずつ触れていきたい。