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百万円と苦虫女 ★★★★★★★★☆☆

百万円と苦虫女

百万円と苦虫女

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video


「自分探し…みたいなことですか?」
「むしろ探したくないんです。どうやったって、自分の行動で、自分は生きていかなきゃいけないですから。探さなくたって、嫌でもここにいますから。」


たまには新しめの邦画でも観ようかな、と思ってAmazonプライムの見放題枠で探していたところ、目に留まったのでこれを。蒼井優、結構好きなんですよね。
些細なきっかけで罰金刑を受け、前科者になってしまった21歳の主人公・鈴子が、実家を離れ「100万円が貯まったら次の街へ行く」というルールで全国を放浪するロードムービー…なのか?


人間関係をリセットし、まっさらな状態で生きていこうとしても、暮らしていくうちに、その土地での人との関わりが否応なく生まれていく。
海辺の街では、海の家に遊びに来たチャラい青年に、次に訪れた田舎の桃農家では、やや無神経な農家の長男に、そして最後に訪れた首都圏の都市では、大学生の青年に好かれる。
最初は距離の取り方がわからなかった鈴子も、農家では長男が自分を守ってくれる関係になり、そして地方都市では、中島と付き合うようになる。
そこから急に中島が金を貸してくれとか言いまくってデート代も何も出さないヒモ男になった時は中島最低だな!とか思ってましたが、最後で真意が明かされるという。
ラストは単純なハッピーエンドではなく、こういう終わり方するんだ、とは思いましたが、あの不器用さでは報われなくても仕方ないかな。


個人的には、鈴子が過去を告白したことが一つのきっかけで付き合い始めたんだから、そこは伝えないと駄目なのでは…と思いましたけど。金だけの問題じゃないでしょ…。
結局、最後に鈴子が弟からの手紙で悟ったように、お互いに本音を隠してしまう2人だったから、すれ違ってしまった、ということなのかな。
「長く一緒にいられるコツって、一番大事なことは言わないでいることなんじゃないかって思っていた」という鈴子。その結果、大切なことが「言えない」関係になってしまった。


そして居場所をリセットして新しい関係を築こうとする鈴子と対称的に描かれているのが、小学生の弟・拓也。学校では同級生からいじめを受け、中学受験して違う学校に通おうとしている。
つまり、弟は…というか子供は、今の環境や関係が嫌でも、簡単にはリセットできない。結果、いじめに立ち向かって喧嘩し、児童相談所に連れて行かれてしまったわけですが。
本音を隠して愛想良く付き合うのか、本気で相手と対峙するのか。年の離れた姉弟、という設定でこの辺をうまく対比しているのは上手いなー、と思いましたね。
…でも、本筋と関係ない感想を言えば、いじめてくるようなカスと対峙して得られるものより、中学受験して良い環境で学ぶことで得られるものの方が断然多いと思うぞ。


こういうナイーブなテーマがガン刺さりする年齢は過ぎてしまっているのでアレですが、この映画、蒼井優の魅力が遺憾なく発揮されているな、というのが一番の印象。
蒼井優の顔のアップが頻繁に出てくるんですが、間の取り方やその時の表情の一つ一つが、セリフ以上に雄弁で。ただチャーミングなだけでなく、深みを感じる演技がとても良かった。


良かった、といえば、農家の長男を演じるピエール瀧の存在感。今まで出ている映画ってあんまり観てなかったけど、こんな存在感出せるんだな…と、驚きました。
ちょうどタナダ監督と蒼井優がこの作品以来にタッグを組んだ映画が今公開されてるみたいだし、観に行ってみようかな?週末は仕事かもしれないからちょっと予定読めなくて困るけど。