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万引き家族 ★★★★★★★★★☆

万引き家族

万引き家族

  • メディア: Prime Video


???「次は万引き家族な」とか言われたので観ることに。何が「次は」なのかよく分かりませんけど。万引きは良くない。


東京の下町で暮らす柴田治と妻の信代、息子の祥太、信代の妹の亜紀、そして治の母の初枝。正規の給料以外に、初枝の年金や万引きで生計を立てている。
社会の底辺層に見えるのに、悲壮感はなく、どこか明るい印象すら受ける。ある日、団地で震えている幼い女の子を見つけ、見かねて連れ帰ることに…。


最初から、どこか既視感を覚えていました。社会の底辺、どこか暗さはなく、歪な構成の同居…。
途中で、「これ、黒澤明の『どん底』じゃない?」ということに気づいてちょっとスッキリする。意識したのかは分かりませんけど、かなり共通点ありますよね。


法律上は本来「家族」ではなかった柴田家は、作中での様々な体験を通して本質的な意味での「家族」になっていく。その共同体が、終盤にあるきっかけによって崩壊してしまう。
それでも、信代は祥太に本当の親に関する情報を告げるし、「家族」を守るために罪をすべて引き受ける。治も祥太を家に泊め、翌日はバスを追いかけて何かを伝えようとする。


つまり「家族を「家族」足らしめるものとは何なのか?」というテーマを描いたヒューマンドラマだったのではないかと。それはもちろん血縁関係でも、法律でもない。
信代が取り調べで「死体遺棄は重い罪ですよ」と言われて「捨てたんじゃない。誰かが捨てたのを拾ったんです」と言っているのを聞いた時、一瞬「いやその嘘は苦しいやろ」と思ったんですが
よくよく考えたら、関係性を「捨てられた」のは初枝も、祥太も、「りん」もそう。社会から「捨てられた」人々が寄り集まっていたのが、あのボロ家だったんだよなあ。
結局、本当の両親の元に戻ることができた「りん」もまた虐待されているような描写でしたし、どん底から抜けることが出来ないのも、はたまた抜けられても、結局は厳しい現実がある、という。


テーマは割と自分好みだったんですが、エンタメ作品として考えたら、今一つ盛り上がりには欠けたかな、とも。やたら松岡茉優のJKリフレシーンを推されたけど、まあ山場といえばそうか…。
あと、ちょうど観ている時に冷蔵庫が空だったので、作中でみんなが食べているジャンクフードが美味しそうすぎてやたらお腹が空きました。その辺りのリアリティも良かったなあ。
そういえば、黒澤に似てるって書きましたが、取り調べで急にカメラに相対するカットで小津作品を思い出しました。やっぱり全部あれなら慣れるけど、急に挿入されるとインパクトありますね。