適当な日常を綴る’

明朗・潑溂・無邪気なブログ

赤線地帯 ★★★★★★★★★☆

先日『乱』を観るために、Amazonで角川シネマコレクションの2週間無料体験に加入していました。
その期限が来週で切れるので、その前にもう何作か観ておくか、ということで、溝口健二監督の遺作であるこれを。


赤線地帯

赤線地帯

  • 発売日: 2015/09/21
  • メディア: Prime Video


売春防止法の廃止が国会で審議されている頃、吉原の遊郭「夢の里」で働く女性たちを描いた作品。
神戸の貿易商の娘で、親への反撥から家出してきたミッキー。客を騙してお金を巻き上げ、同僚に金を貸して利子でまた儲けているやすみ。
離れて暮らしている一人息子との同居を夢見ているゆめ子。結核の夫と幼子の生活費を稼いでいるハナエ。普通の主婦に憧れているより江。主な登場人物は5人。


売春防止法という法律を寡聞にして知らなかったので、まずそれについて調べるところから。この作品では、最後に売春防止法廃止は流れますが、実際には廃止されたんですね。
それで結局どうなったか、というと…なわけですけど。「赤線」「青線」という言葉自体も今回初めて知ったしなあ。あまりにも馴染みのない言葉すぎて…。


女性の受難を描く、というのは今作でも同じで、全体を通して暗い。主婦に憧れて結婚したより江が、体良くタダ働きさせられてまた遊郭に戻ってきたり。
ハナエの夫が生活苦から自殺未遂をしたり、久しぶりに会った息子に「母親がこんな仕事してるの恥ずかしいからもう縁を切る」と言われて発狂して精神病院行きになるゆめ子が一番キツかった。
全員不幸というわけではなく、ハンチョウのようにお金を貯めていたやすみだけが、最後に店を出て独立する。受難だけでなくたくましさを描いているのも、一貫してますね。
最後に下働きだったしず子が勤めに出ることになり、おそるおそる客引きをするラストも印象的でした。現代音楽かホラーかというようなBGM、冒頭でも使われてたけど不気味すぎる。


吉原が舞台なのに、神戸出身という設定の京マチ子の関西弁がすごく流暢で綺麗でした。まず京マチ子自体がスタイル良くて美人すぎる。小津の原節子レベルの存在感がありましたね。
こんな仕事辞めて帰ろう、と迎えに来た父親を、逆に母への不実を詰って追い返すシーンが好きです。さんざん家庭を顧みずにいたのに何を今更、と。
特に父親が「三宮の不良くらいならまだしも、吉原の女と知れたら妹の縁談がフイになる」というシーン。60年以上前から三宮は治安悪かったんだなー、と思って笑ってしまいました。