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陸軍 ★★★★★★★★☆☆

陸軍

陸軍

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video


幕末から明治の時代にかけて、日本陸軍の隆盛に関わり続けた一族の姿があった。
祖父は三国干渉に憤りながら逝き、病弱で日露戦争の前線に出られなかった父は、その後の商売にも難渋する。
やがて時は大正から昭和へと移り、日本は再び戦争の時代を迎えて、息子の出征も決まるのだが・・・。
出征する息子を見送る母の哀しみを爆発させた、映画史上に残る壮大なクライマックス!


1944年12月公開。…もう、この年代を観ただけで普通の映画ではないのが分かりますね。終戦の半年前に映画が公開されていたのか…。
黒澤明監督の『一番美しく』が1944年4月らしいので、更に8ヶ月も後。太平洋戦争の真っ只中ですね。
陸軍の依頼で制作された作品らしく、冒頭に「陸軍省後援 情報局國民映画」と表示されますが、タイトルに反して内容はほぼ陸軍は関係ないという…。


三国干渉に憤って山縣有朋に談判しに行く祖父・友助、病気のため日露戦争で前線に出られなかった父・友彦、そして最後に出生する息子の伸太郎。
明治~昭和にまたがる、3世代と軍隊との関わりを描いた作品で、実質『ガンダムAGE』ですね。…まあ、それは半分冗談ですが、流石に時代故かプロパガンダ要素が強かった。
ただ、現代で観ると、そのプロパガンダ的意味づけが滑稽に感じて、逆説的に反戦のメッセージが読み取れてしまうような。そういう意味でも、今観るのも悪くないですね。


「戦死した方も我々を喜ばせようと思って死んでくださったんじゃ」「よく知らんくせに軍隊のやることに文句をつけるな」くらいはまあ、こんなもんかな、と思ったのですが
流石に「日本人なら、元寇で神風が吹かなかったら日本は負けてたかもしれない、とか言うな!」って友彦がキレるところは滅茶苦茶すぎて笑ってしまった。
観方を変えれば、ここで言い争いをした櫻木は軍隊を絶対視していないし、息子の無事を心配して怒られたりもしている。どちらが普通の感覚かというと…。


そして、今作を問題作足らしめているラストシーン。母が出征していく息子を見守る、という、展開を文字にすればただそれだけのことなのですが、圧倒されてしまいました…。
ラッパの音が聞こえてきて走り出し、行進の中から息子を見つけ出し、無事を祈る。この10分弱の雰囲気は作品全体から考えるとかなり異様で、戦意高揚からはかなり逸脱してますね。
このシーンが問題視されて、しばらく映画が撮れなくなったというのも納得してしまう。田中絹代のすごさと、激昂する笠智衆の珍しさも印象に残った作品でした。