適当な日常を綴る’

明朗・潑溂・無邪気なブログ

無限のリヴァイアス ★★★★★★★★★☆

ついでに谷口悟朗作品を見てしまおう、と思ってリヴァイアスにも手を出してみました。2クールくらいだと見やすくていいですね


簡単なあらすじとしては、少年少女達約500人が宇宙を漂流するというものです。『十五少年漂流記』や『蠅の王』のアニメ版と言えば分かりやすいかもしれませんね
アニメだと『銀河漂流バイファム』にも通じるところがあるかもしれません。ただ、バイファム十五少年漂流記だとするとリヴァイアスは蠅の王という位置づけですね
つまり、前者が協力や希望のような「正」の面を中心に描かれているのに対し、後者は隔離された環境での異質なコミュニティという「負」の側面が中心に描かれています
漂流する船(ヴァイア艦)には、S-fixという乗組員の精神とリンクして操縦するという中枢システムがあるのですが、長期間航海していると精神に変調をきたしてしまうという
設定があって、艦内が徐々に狂気によって支配されていく展開を補強しています。まあ、リヴァイアスは精神崩壊するまでには至らなかった稀有な存在であるという設定はありますが…


ただ、そんなシステムがなくても、そもそも登場人物の中に元から問題を抱えたキャラクターが多いというのがこの作品の魅力でもあり賛否が分かれるところでもあると思います
主人公は判断力に優れているが腕力が弱く優柔不断なのに対し、その弟は実力主義者で協調性がないので喧嘩が絶えず、更には幼馴染を巡って確執がある、というゴタゴタですし
そのルームメイトは過去に姉との近親相姦の末に姉が自殺したというトラウマを抱えているとか、その彼女が集団暴行を受けるとか、これ夕方に放送してたの?と疑問になるレベル
宗教をよりどころにルームメイトを絞め殺したり手下に恋敵を襲わせたりするファイナとか、リヴァイアスに乗ってなくてもヤバいことしてたんじゃないか?と疑ってしまうw


個人的には、艦内の統治方法の変遷が面白かったです。初期はエリートの上級生が指揮を執る穏当な政権だったのですが、不安を与えないために伏せていた攻撃の事実を
不良グループが暴露したことでそのグループに乗っ取られて好戦的な政権に変化し、更にはその後それを見限ったクルーの一人がオフレコの会話を暴露して失脚に追い込み
多数決で選ばれた上級生が締め付けを緩めたために艦内の秩序が乱れて賭博や略奪が横行するようになり、その被害に遭って彼女を傷つけられたキャラクターが怒りのあまり
クーデターを起こして独裁政権を樹立し、暴力で暴力を抑え込む恐怖政治へ突き進む…という、なかなかに示唆に富んだ展開だったのではないかと思います


書ききれないほどいろいろなキャラクターが出てくる群像劇なのですが、その分人間模様以外はあまり緻密というか、丁寧な設定ではなかったような気がしますね
食料は大量に備蓄してあって餓えないような設定でしたし、リヴァイアスを追う大人も結局は私怨に近い動機だったわけで、そこら辺はまあ話を進めるうえでの道具だったのかな、と
好きなキャラクターは底抜けに明るいルクスン・北条と官僚的でストイックな思想のヘイガーですかね。ヘイガーはすごい重要人物だけどホモって設定は必要だったのかな(
本筋に関わらないキャラクターも人間的にどんどん成長していったり、逆に最後まで変わらなかったり…と、一人一人の変遷が見られるのも群像劇ならではの面白さだと思います


ストーリーは荒削りですしキャラクターは大体狂気をはらんだ人物ばかりなので共感はしにくいですが、引きこまれるタイプの作品であることに間違いはないと思います
谷口監督作品特有の魅力的なキャラものアニメとして勧められる良作だと思います…が、終始ドロドロした人間模様が描かれているので苦手な人は見ない方がいいかもしれません