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明朗・潑溂・無邪気なブログ

リズと青い鳥 ★★★★★★★★★☆

響け!ユーフォニアム』の希美とみぞれを描いた新作、ということだけしか前情報を仕入れずに観に行ったのですが、なかなかすごい作品でした。
タイトルになっている「リズと青い鳥」とは作中に登場する童話のタイトルで、「少女リズの元にある日現れた少女(正体は青い鳥)が最後にリズと別れ、飛び立って去ってしまう」というものなんですが
この劇中劇がストーリーと交互に進行していくんですね。3年生になった希美は部内のムードメーカー的存在で、みぞれは相変わらず希美に依存しながらも、練習して高いレベルの実力を維持している、という
2人の関係の齟齬が徐々に浮き彫りになっていく様子が冒頭のソロパートの掛け合いが合ってないところを皮切りにどんどん描かれていくわけですが*1、見ていてどうなるのかとハラハラしました。


中盤まで、リズと青い鳥の関係は希美とみぞれの関係に似ている、という話が何回かなされるんですよね。つまり奔放で人気者な希美が青い鳥で、それに振り回され、最後に一人置いて去られてしまうリズがみぞれだ、と。
ところが、終盤にみぞれが「青い鳥はどんな気持ちだと思う?」と問われて「リズが青い鳥に対して自由に空を飛んでほしい、と願うなら、青い鳥がリズを愛しているなら飛び立つしかない」という1つの答えに辿り着いて
合奏で素晴らしいオーボエソロを披露するんですよね。今までの演奏とは笑ってしまうくらい音の伸びが全然違って面白かったです。そこで希美が「実力の劣る私に合わせようとしたせいでみぞれが実力を出せなかった」と
感じてしまう、という生々しい話でした。つまり、圧倒的な才能を持つみぞれが青い鳥で、それを籠の中に閉じ込め、縛ってしまうリズが希美なのではないか、という話なんですが、この“逆転”には驚かされました


当然、どちらかがリズでどちらかが青い鳥だ、という話ではないんですよね。みぞれにとっても希美にとっても、お互い自分にはないものを相手が持っていて、それに対する憧れがあるから相手が青い鳥に見えてくる。
ただ、人気少年漫画のキャラではないですが“憧れは理解から最も遠い感情”なわけで、理解しようとしたらそこには少なからず痛みが伴うんですよね。今作は特に希美のそういう人間臭さが出ていて良かったと思います
結末が意図的にぼかされていましたが、少なくとも最終的に2人は歩み寄ることができた、と自分は解釈しました。そこがゴールではなく、あくまでもまだ物語は続いていくので、その後どうなるかは…という話ですけど
他にも部長らしくなった優子とか、今まで出てきたキャラクターの成長も見られていい映画だったので、“2期までを全部見た上で”是非観ましょう。オススメです。

*1:見ながら「ピッチ合ってないやん」ってツッコミそうになった