『Love Letter』『花とアリス』を見たのが確か3、4年前。別に岩井俊二ファンというわけではなく、この3作品は劇伴で牧野由依さんが参加しているんですよね。ファンとしては見ておかなくては、と思いつつも
これだけ見ていなくて、ふと存在を思い出したので借りてきました。名前だけはよく耳にするけどストーリーとか何も知らなかったんですが、中学生のいじめを2時間半描くというなかなか見ていてキツい作品でした
1年前は同じ部活の友人だった星野が、沖縄旅行で死にかけ、また他人の死を目の当たりにし、親の会社が倒産…等の要因により夏休み明けから急に豹変し、不良グループを結成するようになったことで話は暗くなっていきます
援助交際を強要される津田、美人だからとクラスの中心となる女子グループに疎まれて不良に強姦される久野。万引きをさせられてそれが学校にバレたからと自慰をさせられる主人公。いたたまれない気持ちになりました
そんな主人公が唯一ハマっているのが「リリイ・シュシュ」という女性歌手で、自らファンサイト「リリフィリア」を立ち上げてファンと交流するんですよね。主人公・雄一のHNが「フィリア」で、雄一達をいじめる
星野のHNが「青猫」。匿名掲示板の上では2人は仲良く言葉を交わしているのに、現実ではいじめっ子といじめられっ子の関係。悲しい話だと思いましたが、現実は暗く希望がなくても、同じ趣味を持った人同士が
集まるコミュニティなら自分の居場所が見出せる、裏を返せばそこにしか自分の居場所がない。思春期特有の悩み、と言うのは簡単ですが、趣味に人生のウェイトを多く割いている自分にとっては他人事ではない、と感じました
まあ流石に自分は現実で居場所がないわけじゃないですが!!…話を戻して、クライマックスのリリイのライブ当日、雄一のチケットを丸めて投げ捨て、自分だけコンサートへ向かった星野の正体が「青猫」だと気づいた
主人公が、帰り際の人混みの中で星野を刺し殺してしまうんですよね。雄一の心情を推し量るには年を取りすぎてしまった気もしますが、同好の士の正体を知った驚きと悲しみ、そんなところでしょうか。
通して見て改めて思いましたが、救いのない作品である上に、登場人物に生気がない。鬱屈した現状からどう立ち向かうか、というところで、答えが自分がいじめる側に回る、であったり、自殺であったり、あるいは
耐え忍んでその結果殺してしまったり…自らの意志で丸刈りにした久野は立ち向かったと言えるのかもしれませんが救いのある前向きさではないですよね。「セカイ系」って使い古された言葉がありますけど、中学生、それも
作中のような片田舎の中学生にとっては、学校という狭いコミュニティが人生の全てであるように錯覚してしまうものなのかもしれない、と思いました。自殺までせんでも…というのはあくまでも大人の目線から見た感想で、
津田の目線から見たら人生に何の希望も見出せなかった。彼ら、彼女らの目線まで落として考えると、非常に息苦しいところを頑張って生きている、そこに現れたのがリリイ・シュシュ。ということなんでしょうね。
牧野さんが弾いたというドビュッシーの『アラベスク』、エピローグでも流れてましたが素晴らしかったです。しかしやっぱりこの手の映画は鬱屈した青春送ってないから感情移入はし辛いですよね。幸せな悩みですが。