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静かなる決闘 ★★★★★★★☆☆☆

静かなる決闘

静かなる決闘

また医者ものかよ、って思ってしまった( 『酔いどれ天使』では三船敏郎が患者でしたが、今度は主人公の医者役で、手術中に針刺し事故で梅毒に冒された、という設定。これも今の感覚だと梅毒くらいそこまででも…って
思ってしまいそうになりますけど、当時の感覚だとHIVみたいなものなのかな、というような描かれ方でした。で、志村喬は父親の医者役、と。タイトルの「静かなる決闘」の通り、この作品では殺陣シーンもなければ
決闘もないんですが(胸ぐらつかんで、くらいはありますけど)、何が「決闘」なのかというと、梅毒に冒された自分では迷惑がかかるからと許嫁と別れようとする主人公の苦悩がまず1つ。梅毒に感染しながら妻にもそれを隠し
治療せずに医者の忠告を無視する、主人公の梅毒感染の原因となった患者・中田との対比が2つ。最後に、献身的な許嫁・美佐緒と適当に仕事をしながら徐々に感化されていく看護師・るいとの対比で3つ…なのかな?
特に看護師・るいが徐々に医者親子に感化され、最後は中田にすごい剣幕で詰め寄る辺りはとてもカタルシスを感じて気持ち良かったですね。主役級の存在感でした。ストーリーを見るとあまり奇抜なところもないし
黒澤監督の医者ものだと『酔いどれ天使』を抜きにしても、やはり長編の名作『赤ひげ』があるので存在感は薄めになってしまうんですが、話が分かりやすい分、肩の力を抜いて見られる作品だったと思います。