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劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~ ★★★★★★★★★☆

前から観に行こうと思っていたのですが、折角バンダイチャンネルで見放題だし『2』を見直しておくか、と思って見進めてたらユーフォ熱が再燃してしまいました。
…で、調べたら舞台挨拶やるやん!これ行こう!と即決でチケットを取りました。今年は貯金するとは何だったのか。まあこういうのは一期一会ですからね。行きたい時に金銭は理由にしない。


というわけでいつも通り片田舎から始発で新幹線に飛び乗って大阪まで。劇場は年配の方が多いように感じました。大体アニメ映画って自分と同世代か下くらいが多いので珍しいかも。
自分の席は5列目の一番端で、これはちょっと見辛いかも?と思ったのですが、逆に舞台挨拶の時に良席になるしなあ、と思い直しました。
原作は未読ですが、アニメと『リズと青い鳥』の映画は見ている状態です。あと、自分も高校時代は吹奏楽部の低音パートだったので、どうしても肩入れしてしまう部分は多いんですよね。


冒頭の告白という鋭いフックは置くとして、主人公・久美子たちが2年生に進級し、新たに新入生を迎えた新生・北宇治吹奏楽部の大会までを久美子視点で描く(ここ重要)という筋立て。
優等生で上手いけど腹に一物ありそうなユーフォ担当の久石奏。上手いけど先輩と打ち解けられない鈴木美玲と、対照的に技術は劣るものの必死に練習しており
先輩とすぐ打ち解ける鈴木さつき、という2人のチューバの新入生。そして捨て猫のように周りにきつく当たるコントラバスの月永求。低音パートの新入生、一癖あるキャラクターばかりで
自分が久美子の立場だったら胃が痛くなりそうだなあ、と思ってしまった。低音パートの中での軋轢が表面化するくだりは面白かったし、奏というキャラクターの怖さを感じましたね。


コンクールに出られる人数が決まっている時に、3年生が出るべきなのか、それとも上手ければ下級生が出るべきなのか。全国を目指している以上、当然上手い人が出るべき、というのは
綺麗事で、実際にはそこで下級生が3年生が最後に出場する機会を奪うことによる軋轢は確実にある。この難しい問題を、今作は1期からトランペットのソロパートを巡る対立を通して
描いていましたが、今回も、高校から吹奏楽を始めた2年生、3年生より上手い経験者の1年生、を登場させて描いていたのは、個人的にとても興味深いポイントでした。


当時も1年生の麗奈が3年生の香織先輩に替わってソロを吹いたけど、決まった後ギスギスはしなかったよ、とファミレスで説明する久美子に対する
奏の「それは去年北宇治が全国に行ったから、結果を出したから文句が言えなかっただけでは?」という返答は、今作で描かれていた重要なテーマだったように思います。
つまり、「結果が出たから、遡及的に過程や努力が評価されただけなのでは?」「結果の伴わない努力には意味があるのか?」ということですね。


奏は過去の苦い経験から過程そのものに価値を見出せなくなっているところに、久美子のあの雨の中での説得シーンがある。奏は、ある意味で昔の久美子なんですよね。
奏に「頑張っても報われないことはあるけど、頑張ることは無駄じゃない」と力強く言う久美子は、コンクールで勝ち進めなくても悔しいと思えなかった、かつての自分を
奏に投影していたのではないか。自分は見ていてそう感じました。そこで奏が心を動かされたからこそラストで、それこそ以前の麗奈のように「死ぬほど悔しがる」奏に繋がったんですよね。
今までの物語の積み重ねを見ているからこそ得られる感動。もちろん明言はされませんが、「頑張ること、それ自体は無駄ではない。」青く、だからこそ部活ものにふさわしい結末でした。


久美子と秀一との恋模様もとても楽しめましたし(麗奈の演奏を聴きながら「ゆるす」とか送ってる距離感が好き)、希美とみぞれについては、『リズと青い鳥』で描いているからか
あえて触れず、最後のコンクールでの演奏で見せる。多分かなりの物語を取捨選択して劇場版にしたんだろうなあ、という尺の問題は見ていて何度か感じたのですが
そこをキャラクターの微妙な表情の変化であるとか、視線であるとか、細かい動作に込めているのは流石、と思いました。もう一度見直したら色々発見がありそうですね。


映画の総括としては、久美子視点で描く2年生編、というコンセプトとしては最高の作品だった、と思うと共に、だからこそもう少し、今回描かれなかった色々なキャラクター達の
お話も見てみたいなあ、というのが正直なところですね。緑輝と求君のこととか見たかったし、何より所謂「なかよしかわ」についてももっと見たかった。最後の演奏シーンで
色々な部員が代わる代わる画面に登場するのを見ていくうちに、この作品の世界をもっともっと見ていたい、と思わされました。贅沢な話なんですけど、また新作作ってほしい。

舞台挨拶

…で、終わった後にどこからともなく拍手が起こり、若干のインターバルの後に舞台挨拶。メインキャスト4人組+監督、だったのですが、自分の席が通路側の一番端だったので
至近距離を演者の皆さんが行きも帰りも通りすぎるという、なかなかの当たり位置。最近イベント行ったら大体席が良いので、そろそろ揺り戻しが来そうな気がしています。


色々お話されている中で、印象に残ったのは、監督の「やりたいことを詰め込めた作品になったと思う」という発言と、久美子を演じたともよちゃんの「息遣いについて
最近よく気にしている」というお話。久美子の細かいセリフ1つ1つから感じ取れる「リアルっぽさ、生の感覚」というのが本当にすごいと思っていて、良い意味で
萌えアニメっぽくないと思うんですけど、今回もそれは健在でした。今回も4人の中で一番演技の話について語ってましたし、プロ意識というか、とにかくレベルが高い…。


今回見て、『ユーフォ』という作品の世界に今まで以上に興味が湧いたので、今更ながら原作を読もうかな、と思い始めました。まとめ買いしてゴールデンウィークに一気に読もうかな?
演奏シーンは圧巻の一言ですし、間違いなく映画館の音響で観るべき作品。期間中に暇があればもう一度観に行くのもアリかも、と思いました。満足度の高い映画で良かった。