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夫婦善哉 ★★★★★★★★★★

夫婦善哉

夫婦善哉


「頼りにしてまっせ、おばはん。」


大阪の問屋の道楽息子・柳吉が、妻子がありながら11歳年下の芸者・蝶子に入れ込んで勘当。駆け落ちをし、お金や病気、人付き合いで苦労しながら2人で生きていく、というお話。
ダメ男に尽くす女、という構図は『浮雲』と共通点がありますね。奇しくも、この2作品はどちらも1955年に公開されたんだとか。まあ、味わいは全く違うんですけど…。


この作品の魅力は何と言っても、「大阪」の雰囲気を感じられるところですね。登場人物はコテコテの関西弁だし、自由軒のカレーを始め、なんば辺りの食べ物屋が色々出てくるのも良い。
柳吉は蝶子が貯めていたお金を勝手に使って水桶に頭突っ込まされたり、婿養子に頭が上がらなかったり、とまあダメダメなんですけど、どこか憎めない雰囲気なんですよね。
自分が関西人だからかもしれませんけど、関西弁が暖かい雰囲気を作っているのではないかと。料理に拘って、蝶子が帰ってきた時に2階で昆布を真剣に煮ているシーンとか好きです。
テーブルの下で足を絡ませたり、自殺未遂で慌てたり、不器用ながらも蝶子への愛情が垣間見えるシーンがあるのも良い。夫婦善哉を食べに行くラストは正にお似合いの2人という感じ。


冒頭に挙げたのは、最後に柳吉が蝶子に言ったセリフで、当時流行語にもなったそうですが、ここに作品の内容が凝縮されていると感じました。
柳吉は11歳も年下の蝶子を「おばはん」と言いながら、とても頼りにしている。不器用な愛情が込められているからこそ、単なるハッピーエンドではないのに気分良く余韻に浸れるんですね。


展開も決して目新しいものではなく、技巧が凝らされた作品というわけでもない。芋っぽく、ウェットなんですけど、人情味溢れる温かい作品でした。こういうの好きなんだよなー。