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われはロボット

われはロボット〔決定版〕

われはロボット〔決定版〕

1.第一条
ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
2.第二条
ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。
3.第三条
ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。


『ハーモニー』を読み終わって、海外のSFも何か読んでみようかな?と思い、適当に有名作の中から見繕う。多分タイトルとこの三原則は誰でも知ってるやつ。
最初に掲げられたこの三原則を前提に、一見不合理な動きをするロボットたちの行動原理を解き明かしていく、というミステリ要素のある9つの短編が収録されていました。


1950年、つまり70年前(!)に書かれた作品とは思えないほど、古さを感じなかったですね。ロボットという存在が普及した未来社会において、暗示される人類の行く末。
そういうSF要素もさることながら、上述したようにミステリとしてもエンタメ性が高い。3つしかない原則から、ロボットの行動原理を導き出していく、とてもロジカルな作品でした。
例えば、第一条の「また、」以降がもし存在しなかったら、ロボットの行動にどのような違いが生じるのか?(『迷子のロボット』)
もしくは、第一条があるから人間に危害を加えられないはずのロボットが、もし人を殴ったとしたら、どういう理由なのか?(『証拠』)とか。
9つの短編ごとにこの3つの原則のどこをテーマにしているかは違うんですけど、そういう結論なのか、と納得することしきり。『うそつき!』『証拠』が特に好きかな。


そういうミステリ作品として楽しむと同時に、作者の人類観みたいなものも感じられるのが興味深い。おそらく、キャルヴィン博士と同様、やや人間不信というか、性悪説なんでしょうね。
最終エピソードの『災厄のとき』で明かされたロボットの真意、そしてその世界は果たして幸福なのか不幸なのか。個人的には、これは幸福の範疇なのではないか、と思いますけど。