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この音とまれ! ★★★★★★★★★★

天泣

天泣

  • 発売日: 2020/02/21
  • メディア: Prime Video


昨年度に放送されたアニメのうち、視聴環境がなくて断念したものの中で、あまりに評判が良かったので、ずっと気になっていた作品。
1月の瀬戸内杯の打ち上げで先輩から勧められたこともあり、どうにかして観られないか、と思っていたところ、FODプレミアムの観放題にあるのを見つけました。
しかも、配信期間が今日、4月27日の正午まで。これはもう週末に観てしまうしかない、と思い、一気に2クール分観終えました。

廃部寸前の時瀬高校箏曲部。
一人になってしまった部長のもとを訪れたのは不良少年とその友達、そして箏の天才少女だった。
それぞれの箏の音が紡ぐ青春学園物語―


公式サイトからあらすじを引用。廃部寸前の部活で、部員を集めて部を存続させ、全国大会を目指す。ストーリーライン自体はストレートなスポ根もので、その分馴染みやすかったですね。
題材にしているのが「箏」という、大部分の人には馴染みの薄そうな題材でしたが、あまり専門的な描写に立ち入ることなく、音楽の厳しさ、楽しさが描かれていて親切設計だと思いました。


この作品の魅力は、2クールを通して綿密に描いてきた、箏曲部の部員、そしてそれを取り巻く人々の苦悩と克服の道のり。
それがラストの『天泣』の合奏シーンで1つに結実する。得られるカタルシスが半端ではなく、非常に構成が綺麗な点にあると思っていて、とても良く出来た作品だな、と。
演奏に点数を付ける意味とは、とか、努力の先に何があるのか、とか、先輩を差し置いて大会に出ることの是非とか、他校を描写することで弱小部だけでは描けないところも描いているし。


例えば、誰からも信頼されなかった愛が、部内に居場所を見つけ、箏に打ち込むうちに優しさを取り戻していったり。
受験に失敗し、自分に自信が持てなかった武蔵が、部長として部をまとめようと奔走する中で、後輩に慕われ、自信を取り戻していったり。
母を振り向かせようとした結果関係が壊れてしまい、また同世代の友人もいなかったさとわが、箏曲部という居場所を見つけ、かつての自分と向き合っていったり。
他にも色々ありますが、最初はバラバラだった部員、顧問、取り巻く人々の気持ちが、1つ、また1つと障害を乗り越える度にまとまっていき、遂には素晴らしい演奏をするに至る。
音楽が説得力を持つ、っていうのは言葉だと簡単に書けますが、作中で最初に合奏する『龍星群』の最初のフレーズを聴いただけで「あ、これは凄い」って思いましたからね。


特にヒロイン・さとわと、後半に登場する晶が心に抱えている闇の深さは、どちらも親の死別を伴っており、生半可なものではない。
それでも、いや、だからこそ、2人の心を音楽が、そして部員の真剣さが救うところに感動しました。「才能」と「努力」という、この手の作品につきもののテーマでもありましたし。
奇しくも、2人を演じていたのが種崎敦美さんと東山奈央さんという、『リズと青い鳥』のみぞれ・希美と同じコンビだったところに、因縁めいたものを感じましたね。


真面目一辺倒な作品というわけでもなく、愛・さとわと武蔵・妃呂の2人の甘酸っぱい青春模様もあり、3バカも良いアクセントになっていて、青春学園ものとしても楽しめました。
特にこの辺の描写は2期が多かったかな。1期は本当に部活を再建して認めてもらって大会に出る、という、結構駆け足感があったように思うので。密度はその分濃かったですけど。


さて、題材が似ているので、どうしても自分が大好きな『ユーフォ』と比べてしまうのですが、『この音』の方が、良くも悪くも「綺麗」な作品だな、というのが率直な感想です。
キャラクターが抱えている闇も『ユーフォ』より深いし、それが綺麗に回収されていく様はとても綺麗。…でも、綺麗すぎるなあ、と。あまりに良く出来ているが故に、生々しさに乏しい。
もちろん、どちらがより優れている、というものではないのは前提として、部活動って、何でも綺麗に割り切れるわけじゃない、と自分は思っているので。完全に好みになってきますけど。
この辺は「フィクションにおけるリアリティとは何か?」という話になってくるので、これ以上はやめておきますが。両方とも、とても好きな作品であることは間違いないので。


TVアニメ「この音とまれ! 」~僕たちの音~

TVアニメ「この音とまれ! 」~僕たちの音~

  • アーティスト:アニメ
  • 発売日: 2020/02/26
  • メディア: CD


さて、曲がとても良かったので、全話観終わった直後にサントラCDを購入してしまいました。普段触れないジャンルの音楽を、即買おうと思わせるだけのパワーを持った作品。
時瀬だけでなく、他校の演奏も入っているのがとても良いですね。良い買い物をした。



TVアニメ「この音とまれ!」神奈川県予選大会 天泣(演奏:時瀬高等学校箏曲部)


『天泣』は公式で動画が上がっているので、良かったらここを読んでくれている人で、まだ観たことがないという人は、是非一度聴いてみてほしいですね。
それで自分みたいに「これは凄い」と感じたら、是非本編も観てみてほしい。確かにこれは2019年を代表する作品の一つだった。少し遅れたけど、出会えて良かったです。