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秋刀魚の味 ★★★★★★★★★☆

秋刀魚の味 ニューデジタルリマスター版

秋刀魚の味 ニューデジタルリマスター版

  • 発売日: 2013/11/27
  • メディア: Prime Video


「そう(戦争に負けてよかった)かもしれねえなぁ。バカな野郎が威張らなくなっただけでもね。」


平山は妻に先立たれ、家事一切を娘の路子に頼っていた。同窓会に出席した平山は、酩酊した恩師を送っていく。
そこで会ったのは、やもめの父の世話に追われ、婚期を逃がした恩師の娘。平山は路子の縁談を真剣に考えるようになる……。
結婚を巡る父と娘の関係という小津映画定番のテーマを柱に、老いてゆく者の孤独を際立たせている。
本作の構想を練っていた1962年2月に最愛の母を失った小津監督の、老いることへの悲しみがここに投影されている。


こんなタイトルだけど、結局作中に秋刀魚は出てこなかった。鱧は出てきましたけど。
まず、おじさん同士のしょうもない会話劇が面白かったです。時代性なんだろうけど、小津作品の男性って基本的にデリカシーがなさすぎて笑う。


印象的だったのが、平山とその恩師の関係。戦後しばらくしてからが舞台になっていて、主人公は兵役を終えて再就職できたけど、恩師は生活のために中華そば屋を経営している。
先日『まあだだよ』で慕われる先生を観たからというのもありますが、かつての恩師が生活苦で、娘も嫁にやれないと嘆いているのはちょっとやるせない気持ちになりました。
あと、冒頭に挙げたセリフ。今まで観た作品だと、意識的に戦争に関する描写は避けているのかな、と思っていたので、ややストレートに表現されていたところに驚きました。
軽快な『軍艦マーチ』もすごくキャッチーで、「守るも攻めるもくろがねの~」ってメロディーが数日間頭から離れませんでした。
楽しそうに行進する加東大介を観たあとで、ラストで娘を嫁にやった平山が酒に酔いながら寂しそうに歌う軍艦マーチが刺さる。晩年の作品では一番好きかも。