- 発売日: 2012/12/05
- メディア: Blu-ray
「分数の割り算がすんなり出来た人は、その後の人生もすんなりいくらしい」
現在の自分に漠然とした物足りなさを感じている27歳のOL岡島タエ子は、休暇を取って姉の夫の実家がある山形へ出掛ける。
東京育ちのタエ子は、小さな頃から田舎のある生活に憧れていたのだ。旅の途中で、彼女はふと小学5年生の自分を思い出してしまう。
一度蘇った思い出はタエ子から離れていかなかった。小学5年生、それは女の子が一つ階段を昇って成長するためのさなぎの季節なのかもしれない。
いくつも思い出が浮かんでくるのは、自分に再びさなぎの季節が巡ってきたのだろうか。もう一度、自分を見つめ直す時なのかもしれないと、タエ子は思いをはせていく。
山形駅に着いたタエ子を待っていたのは、新しい農業に意欲を燃やしている青年、トシオとの出会いだった。
紅花摘みに田んぼの草取り、リンゴの袋がけ。トシオの案内でタエ子は田舎の気分を満喫する。
自然と調和しながら生きている農家の人々の姿に、地に足の着いた生活の魅力を発見するのだった。そして、東京へ帰る日の前夜、おばあちゃんから、思いもかけない話題が出る。
ジブリの中でまだ観ていなかったので。ジブリを観るの自体、『思い出のマーニー』以来だと思うので5年以上ぶり…?
山形に向かう途中で、子供時代のことを思い出す、という体で、子供時代と大人時代が交互に描かれるんですが、子供時代の方が淡いタッチだったところに拘りを感じました。
風景がすごく丁寧に描き込まれていて、リアリティを感じる。…とか思っていたところに、トシオの「田舎の景色は人間が作ったものなんですよ」というセリフが刺さりました。
自然と人間の共同作業が田舎だ、というトシオの論は興味深く、これを90年代前半に盛り込んであるというのは、かなり先進性を感じますね。
小学生時代のエピソードは、誰しも経験したようなものが含まれていて、懐かしい気持ちになるのではないでしょうか。
下の子で、女性だったらもっと共感できたのではないかと思うので、アラサー女子が観たらもっと刺さるのかも。思ったより生々しいエピソードもあって驚きました。
「晴れの日と雨の日とくもりと、どれが好き?」が甘酸っぱすぎる。絶対あれ美化されてるんだろうな、と思うんですが、子供時代の思い出ってそういうものですよね。
それに対し、大人時代のエピソードは、ちょっと唐突に感じましたね。田舎の人達の笑い顔もちょっと怖いし。農家の嫁になる、って、かなり重い決断な気がするんですけど。
まず、東京での仕事と一度向き合わなければいけないのでは?と感じてしまった。二十代でこの決断ができるまで、過去の自分と決別できた…ということなのかな。
そういえば、オープニングの演出が往年の邦画っぽいなー、と思ったんですが、作中でもいくつか小津っぽいところありましたね。高畑監督も好きだったのかもしれない。
ところで、主題歌の『愛は花、君はその種子』って『The Rose』のカバーだったんですね。初めて聴いたので驚きました。…まあ、原曲も高垣彩陽さんのカバーで知ったんですが。
ジブリの高畑作品、どれも主題歌は印象的なんですけど、内容はイマイチ刺さりきらないことが多い印象。今作はメッセージ性が強すぎる、とは感じなかったけどなあ。