新興住宅地に住む林一家。この新興住宅地に住む子供達の間では奇妙なおなら遊びがはやっていた。
子供達の最大の関心事は、まだ出始めたばかりのテレビである。
林家の実、勇兄弟もテレビを見る為に、勉強そっちのけで近所に出かける毎日だった。
ある日、両親にテレビをせがんで、叱られたことから、この兄弟は誰とも口をきかないというだんまりストを決行することにする。
連休だったので、久しぶりに小津映画を。1959年公開なので、小津監督作品の中ではかなり後期の作品ですね。
今回のテーマはいつもの「娘の嫁入り」ではなく、もっとほのぼのしたホームドラマ。1940年代の作風に近いかもしれない。
テレビを買ってくれ、と父親に頼んだら「余計なことを喋りすぎる」と怒られ、一切口を利かないというストライキを敢行する兄弟。
そのストライキが、近所付き合いにも思わぬ波紋を広げていき…というもの。文章で書くとちょっとカタいけど、実際はとても長閑で、おおらかな作品でした。
タイトルの「お早よう」は、「余計なことを言うな」と父親に対して子供が言う「大人こそ余計なことを言うじゃないか。お早よう、いい天気ですね、と言わなくてもいことばかり」という返し。
所謂社交辞令なんですが、子供にはその必要性がわからない。一方で、社交辞令を欠かさなかったところで、勝手に邪推されて近所付き合いもうまく行かない。
毎度のことながら、構造が面白いんですよね。色々な出来事があった末、テレビが最後には家にやってくる。そう繋がるのか、と観ていてとても楽しかった。
言いたいことがあるのに、結局最後まで言えずに結局天気の話をしてしまう佐田啓二も良かったな。あの流れは言うやつかと思ったのにw
中盤、居酒屋での「(社交辞令が)無駄って言うたら酒飲むのもタバコ吸うのも無駄ですよ。でも、ええやないですか」というセリフが印象的でした。
小津作品もセリフの反復が多いし人物の移動中もカットしないしで遊びが多いけど、そこから安心感が生まれる。自分の人生も、無駄を楽しんでいきたいですよね。
気づけば戦後の小津作品も観てない作品が片手で数えられるくらいになってしまったし、残りも近いうちに観ていきたい…けど、今年はもう祝日ないんだよなあ。