適当な日常を綴る’

明朗・潑溂・無邪気なブログ

涼宮ハルヒの直観


もはや自分の青春を象徴する作品と言っても過言ではない(?)、ハルヒの新刊が9年ぶりに発売されるということで、楽しみにしていました。
…ということは実はそこまでなく、もう前の巻の内容とか何も覚えてないしなあ、という状態。とはいえ『驚愕』とか確実に実家の押入れだし…。


この巻は、初詣を描いた短編『あてずっぽナンバーズ』、七不思議の創作を描いた中編『七不思議オーバータイム』、そして長編『鶴屋さんの挑戦』の3篇。
短編はラブコメ風味の軽いテイストで、中編は新たなキャラクターが登場し、また古文が引かれたりしながらも、こんな語り口だったな…と懐かしい気持ちになり。


…で、今回の長編。これがかなりの異色作で、鶴屋さんから問題と称したメールが届き、その文章に仕掛けられたトリックの謎を暴いていく、というお話。
今までこのシリーズにミステリのイメージがなかったのですが、(どちらかというとSF+学園な印象)、このエピソードはかなりミステリ成分が強め…というかミステリでした
叙述トリックとかTの正体は薄々気づいたけど、それからもいくつか驚きの展開があって、面白いは面白かったのですが、今までのシリーズとはかなり毛色が違うなあ、と。
作者が本当に描きたかったエピソードなんだとは思いますが、少なくとも王道ではない。まあ面白ければ何でもいいけど、本筋がもう少し進むと思っていたので、その点はやや肩透かし。
でも、全編通して本当にあの独特の文体は懐かしい気持ちになりましたね。今アニメ観たらクドく感じてしまいそうだけど、地の文だとそこまで気にならない。


そして、一番印象的だったのが、この9年間に(主に趣味のクイズゲームで得た)知識のおかげで、長編中のペダンチックな会話のいくらかが理解でき、それがとても楽しかった、という点。
肝心かなめの「後期クイーン問題」は寡聞にして知りませんでしたが、登場する作家名・作品名がほぼ耳馴染みのあるものだったのは完全にクイズのおかげ。
詩の朗読サークルを「死せる詩人の会」と呼んでいた、というエピソードも「あー、ロビン・ウィリアムスの『いまを生きる』か、良いセンスだなあ」とか思えたり。
ラストでキョンと古泉が交わす、本筋に絡みそうな会話に登場したチェーホフの銃の例えも、9年前なら絶対知らなかったけど、今は「有名な概念だよね」と流せたり。


よく考えたら、一番多いであろう、アニメがヒットし始めた頃に10代で読み始めた学生は、自分と同じように、現在は30代になっているわけですよね。
当然、9年前と同じ知識レベルではないし、昔と同じ対象年齢の本を読んでいるわけでもない(と思う)。そういう意味で、やや過剰とも思える衒学的な語り口が、逆に心地良かった。


あとがきの中で、のいぢさん共々昨年の痛ましい事件について触れられており、改めて風化しようがないほどの事件だったと実感するばかり。
そして、チェーホフの銃とかわざわざ持ち出してきたということは、ちゃんと畳もうという意志があるのでは、とも思う。穿ちすぎ?でも、次も期待してます。…なるべく早めだと嬉しい。