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ジョゼと虎と魚たち ★★★★★★★★☆☆

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趣味の絵と本と想像の中で、自分の世界を生きるジョゼ。
幼いころから車椅子の彼女は、ある日、危うく坂道で転げ落ちそうになった
ところを、大学生の恒夫に助けられる。


海洋生物学を専攻する恒夫は、メキシコにしか生息しない幻の魚の群れを
いつかその目で見るという夢を追いかけながら、バイトに明け暮れる勤労学生。


そんな恒夫にジョゼとふたりで暮らす祖母・チヅは、あるバイトを持ち掛ける。


それはジョゼの注文を聞いて、彼女の相手をすること。
しかしひねくれていて口が悪いジョゼは恒夫に辛辣に当たり、
恒夫もジョゼに我慢することなく真っすぐにぶつかっていく。
そんな中で見え隠れするそれぞれの心の内と、縮まっていくふたりの心の距離。
その触れ合いの中で、ジョゼは意を決して夢見ていた外の世界へ
恒夫と共に飛び出すことを決めるが……。


このアニメ映画の予告を観て実写映画を観よう、と思ったので、きっかけはこっちだったりするのですが。年末年始の帰省時に地元の映画館で観てきました。割と年配の人が多かったような?

実写映画との違いでまず驚いたのが、恒夫が割と完璧超人なところ。理系の学生で論文書いて海外留学…って、あまりの落差に驚いてしまった。そりゃジョゼも惚れるわ。
退廃的な要素がオミットされ、爽やかな青春映画になっていました。最早別モノ。「ハッピーエンドにしたい」という監督の意向があって、そこから始まったみたいですね。


ジョゼと虎と魚たち (角川文庫)

ジョゼと虎と魚たち (角川文庫)


原作はアニメ映画を観た後に読んだのですが、どちらかというと実写映画に近い。原作のある種のメリーバッドをビターエンドにしたのは、解釈としてそこまで不自然ではないかも、と。
水族館で魚を観るのはむしろ原作に近かったんですね。…てか、それをラブホの照明の魚にしてしまう実写映画の天才的な解釈やべえだろ。
実写の風景はもちろん、絵の描写や海の描写など、ボンズの作画力が遺憾なく発揮されていて、差別化は十分出来ていると思ったので、これはこれでアリかと。
舞台が地元関西なのもあって、見覚えのある風景がいくつか出てきたのは懐かしかったです。こんな情勢になってしまって、梅田もこの1年は行ってないかもしれないな…。


…ただ、後半、恒夫が交通事故に遭うところからの急展開は何だったんだろう…。自分も足が不自由になったからジョゼの気持ちがわかる、って持っていきかたは納得できない。
障碍者の気持ちなんて土台理解し得ないわけで(そもそも幼少時から足が不自由だったなら尚更)、それでも、どのようにジョゼと関わっていくか、が問題ではないのか。
耐えられなくなって逃げる、という実写映画のほうが、よほど誠実だし、地に足のついた大学生って感じで自分は好きですね。この辺は好みの問題かもしれませんが。


…というわけで、全体的には楽しめたんだけど、ちょっと後半の展開が腑に落ちなかったな、というところ。
割とバッドエンドが好きではないのを加味しても、実写版のほうが好きかな。…まあ、年の瀬にあんな展開観せられても困りますけどね。