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明朗・潑溂・無邪気なブログ

人情紙風船 ★★★★★★★★★☆

人情紙風船

人情紙風船

  • 発売日: 2020/09/19
  • メディア: Prime Video


江戸の貧乏長屋で浪人の首吊りが発生、役人が調べに来る。
長屋の住人である髪結いの新三は、長屋の連中で浪人の為にお通夜をしてやろうと言い、大家を説き伏せて酒をせしめる。
お通夜が行われるが、長屋の連中は酒がただで飲めると喜び陽気な馬鹿騒ぎを行う。


ようやく2021年初邦画鑑賞。1937年公開。タイトルだけは知ってたけど中身は知らず、アマプラのトップに出てきたのでこれにするか、と。
長屋が舞台の群像劇というと黒澤の『どん底』を思い出しましたが、あれと同じく、長屋の人々は貧乏ながら暗さがなく、強かに生きている。


義理人情で動く髪結新三と、浪人で妻の内職で糊口をしのぐ又十郎の2人が主人公で、2人の行動が最後には悲劇に収斂していくのが悲しく、面白い。
序盤の長屋での馬鹿騒ぎや、物売りのコミカルな呼び込みなど、最初は結構明るい話なのかな?と思っていたのですが、全然そんなことはなかった。
現代で言うところの就職浪人の行く末があのようになってしまうのは、80年以上前の映画で、舞台が江戸時代であっても色褪せないものを感じました。


オープニングの首吊りがラストの心中につながっていく構成といい、タイトルになっている紙風船が印象的に二度使われる様子といい、これを20代で撮ったのは確かに天才ですね。
救いのない話なので少し重かったけど、これが公開されて出征して病死したから遺作、ってのも悲しいなあ。山中監督作品は3作しか現存してないらしいし、他のも観てみようかな。