北宇治高校三年、中川夏紀。
私は今日、吹奏楽部を引退した――。『響け! ユーフォニアム』シリーズの人気キャラ・中川夏紀の視点で、
傘木希美、鎧塚みぞれ、そして吉川優子をみた物語。
エモさ全開の青春エンターテインメント。
発売日に買ってその日のうちに読み終えてしまった。なんかここ最近ゲームばっかりで、本読むのも久しぶりだな…。
読んでいてまず思ったのは、やっぱり一番好きなのはこの先輩世代だな、ということ。自身の吹奏楽体験に近しい経験をしているのがこの学年だから、というのが大きいのですが。
中川夏紀と吉川優子の関係性も好きですが、それ以上に、この2人のあすか先輩とはまた違う聡さがたまらなく好きです。理想の部長・副部長だよなあ。
三話の最後に、夏紀が「あれだけ一緒に頑張ってきた面々と合奏する機会はもう二度とないのだ」と虚しさを感じて涙を流すシーン、似たようなことを当時思った記憶があります。
3年間、夏休みも皆が遊んでる中朝から練習して、外形上は自分も青春を部活に捧げた(笑)わけですが、引退と、卒業の時は寂しかったなあ。夏紀よりは感傷的だったかも。
夏紀と同じく、低音パートは楽器が高いから、吹奏楽かオケを続けない=音楽を辞める、になってしまうから寂しかったのかもしれない。別の形で結局大学でも音楽は続けたけど。
卒業して10年以上経った今だから言えますが、確かに虚しいかもしれないけど、時間が経てば自分の中で良い感じに風化して「良い思い出」になると思うんですよね。
それこそあの経験をしていなかったら、この作品にこれだけ感動することもなかったと思うし。人生、自分の経験がどこで活きてくるかなんてわからないからなあ。
友達は遊んでいるのに何故…とノイローゼ気味になりながら、部活から帰ってきて死んだ目で『ゼロの使い魔』を観ていた思い出は多分活きることはないですが、それは置いておきましょう(
たまにTwitterで流れてくる太宰治の『正義と微笑』ではないけど、学んだことや頑張ったことは、そのものを忘れてしまっても、心の底に何らか残っている。そう思いたいですよね。
希美とみぞれの関係については、どこまでいっても残酷でしかなかったな。二人の想いのすれ違い。友情と崇拝と嫉妬が混ざって訳がわからんことになっている。
そして夏紀は希美に優子はみぞれに思うところがあるからこそ、理解者でいてあげたくなる…いや、この4人の関係性面白すぎるでしょ。武田先生すげえな。
上手くなりたかった。昨日の自分にできなかったことを、今日の自分ができるようになりたかった。
それを「偉い」だとか「真面目」だとかいう言葉で他人に形容されたら反吐が出るなと思う一方で、吹奏楽部だと自分だって似たような評価を他人に対して行っていた。
あと、ここが結構クリティカルで結構ドキッとしました。そうなんだよな、別に誰かに認められたくて趣味をやってるわけじゃなくて、楽しいからなんだよな。
卒業当時は虚しいと思ったとしても、夏紀も30歳くらいになったら、当時を懐かしく思えるのではないだろうか、そんなことを考えてしまいました。…このシリーズは人を感傷的にさせる。