適当な日常を綴る’

明朗・潑溂・無邪気なブログ

ソラリス

惑星ソラリス――この静謐なる星は意思を持った海に表面を覆われていた。
惑星の謎の解明のため、ステーションに派遣された心理学者ケルヴィンは変わり果てた研究員たちを目にする。
彼らにいったい何が? ケルヴィンもまたソラリスの海がもたらす現象に囚われていく……。人間以外の理性との接触は可能か?
――知の巨人が世界に問いかけたSF史上に残る名作。レム研究の第一人者によるポーランド語原典からの完全翻訳版。


結構重たいハードSFだったので、購入してから読み終わるまでにかなりかかりましたが、ようやく読了。
ソラリス学」についてかなり紙幅が割かれており、なかなか読みづらいんですが、そのおかげでこの世界観になっているのは確かなんですよね。


序盤はサイコホラーの様相を呈し、中盤からはラブロマンス的要素が出てきて、更に全編に渡り未知の生物(?)とのコンタクトが描かれた多層的作品。
電子書籍で読んだために、あとどれくらいで終わるのかイメージしていなかったので、読み終わった瞬間は「え、ここで終わるんだ」みたいな感想でした。


そして、訳者の解説を読んでいて、こういう自分の「オチを求める」「解釈を求める」みたいな習性への警句となるのが、まさに今作だったんだ、と気付く。
異星の生命体が「人間の理解の及ぶものである」というのは、あくまで人間と同じ解釈の次元に他の生命体もいる、という無意識の前提に立っているけど、それ自体を疑う必要性がある、と。
人間中心主義への問題提起もしつつ、フィクションとしても色々な要素があって飽きさせない。読み継がれる理由もわかるなあ。


読了した後で知ったんですが、森見登美彦の『ペンギン・ハイウェイ』の元ネタ(という表現が正しいのかはわからないけれど)になっていたんですね。
映画を観ただけですけど、確かに、あの作品も「海」が出てくるし、「海」の位置付けも似通っていたなあ。…と、3年越しに気付くという。
フランス文学、古典SFと来たので、次は哲学書でも読もうかな、と思っているところです。それか、もう1冊くらいSFを読んでもいいけれど。