人類は火星へ火星へと寄せ波のように押し寄せ、やがて地球人の村ができ、町ができ、哀れな火星人たちは、その廃墟からしだいに姿を消していった……
抒情と幻想の詩人が、オムニバス中・短篇によって紡ぎあげた、SF文学史上に燦然と輝く永遠の記念碑。新たな序文と二短篇を加えた〔新版〕を底本とする電子書籍版登場。
2030年から約30年に渡って、火星を「侵略」した人類と、その帰結を描いた短編集。核に批判的なのは、1950年の作品ということもあるのでしょう。
ほとんど近未来のテクノロジーが出てくることはなく、主に描かれているのは人間の内面であり、叙情的な火星の描写でもある。
帝国主義への警鐘とも取れるけど、出てくる地球人≒アメリカ人がとても「アメリカ的」だったなあ。「火星人」が運河の水面に映るラストは秀逸ですね。
短編ごとにロマンス、サスペンス、コメディ、寓話…と、スタイルが違うエピソードが多く、とても味わい深かったです。
感想を書くのが難しいので、好きなエピソードを挙げると「月は今でも明るいが」「火の玉」「第二のアッシャー邸」「長の年月」「百万年ピクニック」とか。
次は何を読もうかな?また古典文学に戻ってもいいけど、SFをもう少し読みたい気分でもあり。まあ気の向くままに読んでいこう。