適当な日常を綴る’

明朗・潑溂・無邪気なブログ

パーフェクトブルー ★★★★★★★★★★

アイドルグループを脱退し、新人女優として活動を始めた未麻は、自分の意向とは裏腹に舞い込む、過激なグラビアやTVドラマの仕事に戸惑いを隠せない。
だが、彼女の周囲でその関係者を標的とした殺人事件が次々と発生し始めて――。


今敏監督の映画作品の中で、唯一観ていなかった監督デビュー作。ようやく観ることができたのですが、期待していた以上に面白かったです。もっと早く観るべきだった。
主人公である元アイドルの新人女優・未麻の周囲で起こる殺人事件と、ストーカー被害。これが繰り返されることによって主人公が精神的に追い詰められていく。
その過程で、中盤以降、このシーンが現実だと思っていたらドラマの撮影だったり、はたまた夢だったり、かと思えば現実だったり…と、現実と虚構の境が曖昧になっていく。
この作風は今監督の他作品でも観られますが、既に監督デビュー作でそれが確立されていたんですね。


現実と虚構の曖昧さ、と書くと、どうしても「難解なのでは?」とか「単純な面白さに欠けそう」みたいな印象になりがちなのですが、今作は全くそうではないのが素晴らしい。
ヒロインへのストーカー行為を行う人物、そして殺人犯の正体。この辺はミスリードもあり、サスペンスとしてもよく出来ているし、その上サイコホラーとしての完成度が高い。
その上、要所にエロ・グロシーンを取り入れて興味を引き続ける。家で映画を観るとどうしても注意が散漫になりがちですが、画面に釘付けになってしまいました。


加えて、「アイドルを応援するあまり暴走するアイドルファン」という構図の作品を1997年、モー娘。のデビュー前に発表していたという先見性の高さ。
そして題材こそ色褪せないものでありながら、90年代の街並みには懐かしさも感じる。江口寿史氏デザインのごちゃごちゃした風景、味があって好きなんですよね。


…ところで、主人公が所属していたアイドルグループの「CHAM」、何か聞いたことあると思ったら『推し武道』ですね。もしかして元ネタだったりするのだろうか。
今敏監督作品は『東京ゴッドファーザーズ』がベスト、と思ってたけど、これは甲乙つけがたいな…。もちろん、系統が違うので比較自体が難しいですが。
エログロどっちの描写もあるのでR-18が妥当だと思うけど、国内ではR-15らしい。間違っても万人には勧められないけど、面白い作品が好きな男性ファンには強く勧めたいですね。