適当な日常を綴る’

明朗・潑溂・無邪気なブログ

タイタンの妖女

時空を超えたあらゆる時と場所に波動現象として存在する、ウィンストン・ナイルズ・ラムファードは、神のような力を使って、さまざまな計画を実行し、人類を導いていた。
その計画で操られる最大の受難者が、全米一の大富豪マラカイ・コンスタントだった。
富も記憶も奪われ、地球から火星、水星へと太陽系を流浪させられるコンスタントの行く末と、人類の究極の運命とは? 巨匠がシニカルかつユーモラスに描いた感動作。


また海外SF。あらすじが突拍子もなく、地球、火星、水星、また地球、そしてタイタン…と、舞台もどんどん変わっていく。
ワイドスクリーン・バロック」という分類らしいけど、この用語自体、映画の『レヴュースタァライト』で初めて知ったんだよな(


全体的には、戦争、宗教、文明等々、人類史をブラックに描く語り口がとても興味深かった。特にマラカイを宗教モチーフにしていた辺りはブラックユーモアが効いていて好き。
あとは、水星でのボアズを通して、「人間の幸せとは何なのか?」というテーマに迫るのも良かったですね。ちょっと『星の王子さま』みたいなところがあって。
登場人物はあまり好感の持てるキャラがいなくて、そういう読み方はできなかったけど、サロは好きでした。後生大事に持っていたメッセージの中身があれだったとは…。


幸せとは、というテーマで言えば、「たとえマクロで見た場合に不幸であるように見えても、ミクロで見ると幸せならいいのではないか?」ということを考えさせられました。
結局はお釈迦様の手の上、みたいな話だし、更にそのお釈迦様すら…だけど、それでも今幸せであるならば。「ほんとうのさいわい」、奥が深いテーマですよね。


冒頭の用語をアニメで知った、という話ですが、例えばアニメが好きでも、前提知識や教養を得るために他の媒体の名作に触れておくことって重要だな、といつも思う。
今作のような「当初の敵・上位存在の外側に、更に上位存在が…」っていうのも、例えば『機甲界ガリアン』とか『ザンボット3』とかのオチも似たような感じだし。
古今東西、様々な作品に触れる中で、思わぬ共通項を発見した時のちょっとした嬉しさ、というのを大切にしていきたいので、これからも気が向いたら色々読んでいきたい。
総括すると、ストーリーそのものが面白い、というわけではないけど、読みながら色々考えるのが楽しい類の作品だったかな。太田光が今作から事務所名を命名したのもちょっと分かる気がする。