適当な日常を綴る’

明朗・潑溂・無邪気なブログ

愛はさだめ、さだめは死

日曜に昼寝から目覚めたら上司からの着信履歴があった時の絶望感。早出してなんとかなったので、ようやくこれから1ヶ月くらいは一息つけそう…。てか、土曜だったら詰んでたな。

自然と本能のまえにとまどう異星生物のライフサイクルを、斬新なスタイルで描き、1973年度ネビュラ賞に輝く表題作ほか、
コンピュータによって他人の肉体とつながれた女の悲劇を通して、熾烈な未来社会をかいま見せ、1974年度ヒューゴー賞を獲得したサイバーパンクSFの先駆的作品「接続された女」、
ユカタン半島に不時着した飛行機の乗客が体験した意外な事件を軸に、男女の性の落差を鋭くえぐった問題作「男たちの知らない女」など、
つねにアメリカSF界の話題を独占し、注目をあつめつづけたティプトリーが、現代SFの頂点をきわめた華麗なる傑作中短篇全12篇を結集!

有名だからタイトルだけは知っていた今作、本屋でふと見かけたので買ってみました。最近は新訳ばかり読んでいたけど、1987年訳。言葉づかいがちょっと古い。
読みにくいのはそのせいか…?と最初思っていたのですが、そうではない。元々この短編集、読みやすいように書かれていなかったんですよね。
舞台設定について懇切丁寧に説明されることはなく、適宜頭に疑問符を浮かべながら状況を読み取っていき、読み終えた時に少し理解した気持ちになる。骨のある小説でした。
ライトノベルのように分かりやすいSFは読みやすいけれど、こういう難解だけど独創的な作品はまた違った良さがありますね。今はこういう本はウケないとは思うけど。


言語化するのが難しいけど、異星人とのコンタクト、未知のウイルス、押し寄せる謎の敵、みたいな「既存ではない概念」をそのまま書けるのって、本当に才能なんだろうな。
自分の中の常識を一旦捨てて、作中の奇妙な肌感覚に同調してみると、かなり唯一無二な読書体験ができる。冒頭の『すべての種類のイエス』がその色が強くて最初混乱しました。
『そして私は~』『エイン博士の最後の飛行』『接続された女』『断層』『最後の午後に』等々、面白いエピソードが多々。後半のほうが読みやすい短編が多いですね。
表題作も、異星生命体のライフサイクルを追っていくうちに惹き込まれる。このタイトルがすごくセンスあるんだよなあ。内容そのままのタイトルなのに。


そういえば、表題作を読んでいるうちに「「モッガディート」と「リッリルゥ」という固有名詞、絶対どこかで聞いたことあるぞ…」とすごくモヤモヤしました。
調べたら、ラノベ神様のメモ帳』のぬいぐるみの名前だった。道理で聞いたことあったはずだわ。そもそも「アリス」もティプトリーの本名から取ってたのか…。10年越しに知る真実。