雨宮時子は、夫・修一(佐野周二)が外地へ赴いているため、健気にミシンを踏んで生計を立てていた。
苦しい毎日ではあるが、息子・浩の成長ぶりを夫に見てもらう日を心の支えにした生活であった。
ある時、浩が病に倒れ入院、まとまった金が必要になり途方に暮れた時子は、いかがわしい安宿で見知らぬ男に身体を売ってしまう・・・。
そして、やっと戻った夫は、留守中の妻の真実を知ることになる。
久しぶりに小津作品。公開年は1948年なので、戦後すぐかな。『長屋紳士録』の次の作品ということになるんだろうか。
今作が珍しいなと思ったのは、そこまで裕福でない家庭を描いていること。小津作品って、結構上流階級というか、裕福な家庭を舞台にしているイメージだったので。
今の感覚で考えたら、息子が急病になってまとまったお金が必要になったなら仕方ないのでは…と思ってしまうけど、「貞操」の概念が今より重かった時代ということでしょう。
『日本の悲劇』も似たようなテーマだったけど、あそこまで救いのない話ではなく、二人でこれからやり直そう、という前向きな終わり方だったのは少し安心しました。