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なぜ海野幸は魅力的なのか―『カッコウの許嫁』のアンバランスさ―


©吉河美希講談社カッコウの許嫁製作委員会

赤ちゃんの頃に取り違えられ、ついに本当の両親と面会することになった高校生・海野凪。
その日、名門お嬢様学校の女子高生・天野エリカに偶然出会い、許嫁との結婚を阻止したい彼女の頼みで半ば強引に彼氏役を演じることになってしまう。
……だが、この2人こそが取り違えられた子どもであり、許嫁だった!
2人の子どもが愛しい親たちによって凪とエリカは両家公認の許嫁関係となり、同居生活を送ることに。
クラスメイトの瀬川ひろに恋する凪と父親に反発するエリカが取り決めたのは、「お互い一切関与しないこと」。
ちぐはぐで、どたばたな人生交錯ラブコメディがスタート!


ヒロインが複数いるラブコメディで、一番好きなキャラがいわゆる「妹キャラ」だったことはありますか?私は多分、今まで1度もありませんでした。(『シスプリ』のような例外を除いて)
それが覆ったのが、今春から放送しているアニメ『カッコウの許嫁』で、ヒロイン3人*1のうち、自分が好きなのが海野幸。主人公の妹にあたるキャラクターです。
観ているうちに「あれ、妹キャラを一番好きになるのって珍しいな」と気づいたので、理由について考えてみることにしました。

1.海野幸は「実妹」ではなく「義妹」である

これは設定が上手いと思った点ですが、取り替え子であるということは、主人公・凪と妹の幸は実の兄妹ではないということ。ざっくり言えば、法律上は結婚できるということですね。
ブコメディにおいては、かならずしも「付き合う→結婚」ではないとはいえ、結婚できる可能性がない実妹は、展開上「家族愛」の枠組から抜け出ることができない。
『俺妹』や『ヨスガノソラ』みたいな例外はあれど、基本的にはサブヒロインの位置に収まることが多い「妹キャラ」の中で、義妹であることにより、メインヒロインルートの可能性がある、と。
そもそも「義妹」は「実妹」とは別種の属性では?という気もするのですが、これについて考え始めるとまた別の論点になってしまうので、今回は立ち入らないことにします。

2.天野エリカの「ヒロイン力」の低さ

今作の根幹に関わってくることなのですが、主人公である凪との関係性で見た場合、一番好意を示しているのが妹の幸である、という点。ここがかなり異質。
まず、メインヒロイン(?)のエリカですが、そもそも凪に対する恋愛感情がほぼ描かれていない。無意識のうちに好きになったにしても、あと2話でアニメが終わることを考えると…。
あまつさえ、ここ数話は失踪したエリカの実の兄を探すという展開になっており、凪を兄の代用品として見ているかも…なんて、ラブコメディとして考えたら、魅力に欠けると言わざるをえない。

3.瀬川ひろの煮えきらなさ

では、もう一人のヒロインである瀬川ひろは?というと、凪の想い人であるというアドバンテージがありながら、なんとも掴みどころがないキャラクターなんですよね。
一緒にデートに行ったり、思わせぶりなセリフを言ったりすることはありますが、凪からの告白は受けようとしない。許嫁がいる、という設定はあれど、登場すらしていないですし…。
最新話では「海野君は私が貰っていいかな?」とかエリカに言う一方、幸の気持ちを勝手に凪に伝えたりするし、よく言えば小悪魔的ですが、「今更何やねんコイツ…」という話で。

4.海野幸の魅力は「相対的」なもの?

自分世代のラブコメである『とらドラ!』に例えますが、竜児への恋愛感情を自覚していない逢坂大河と、竜児をどう思っているか明らかにしない櫛枝実乃梨みたいなもの。
それで、あと2話でアニメが終わってしまうという驚き。こんなにヒロインが主人公をどう思っているかの描写に乏しいラブコメディは初めて観たかも、というレベル。
そうなると、曲がりなりにも…というか相当なツンデレとはいえ、凪への好意を一番明確にしている幸が可愛く見えるのは当たり前なのかも。ヒロインレースに参加してるの実質1人だし。
例えば、ひろが『ニセコイ』の小野寺小咲みたいに、明確に凪に好意を示している描写がもっとあったなら、妹属性の幸よりはメインヒロインとして認識できたと思うのですが…。

5.「兄妹間の恋愛」への忌避感が薄れている可能性

そもそも、なぜラブコメの「妹キャラ」がナシだったかを考えると、自分に妹がいるから、というのが大きいと思っていて。妹に恋愛感情を抱くのはありえない。
それが、お互い実家を離れ、今では妹は結婚して一児の母になっている。自分の中で「妹」が遠い存在になっていることが全く影響していないとは言えないかも。キモい話ですが。
冷静に考えたら、たとえ法律上結婚できるとしても、中学生までずっと兄妹として育てられた義理の兄を異性として見るって、自分の感覚ではちょっと気持ち悪いわけで。
その違和感を上回るほど幸が可愛いというのが1つと、それだけ他の2ヒロインに魅力が感じられない、ということなのかな、と。…これは作品としてどうなんだろう?

6.まとめ

ブコメディとして見ると、四角関係のようで、それぞれのキャラクターの想いが不明瞭すぎる、という瑕疵のある作品。であるがゆえに、妹キャラが一推しになってしまった。
過去のヒット作の要素が散りばめられていることが悪いとは思わないけど、料理しきれているようには見えないのがどうにも…。取り替え子の真相より、まずヒロインの魅力だろ、と。
あと2話でどういうオチになるのかは注目していますが、そもそも完結していない漫画原作で明確な結論が出るのか?とも。ともあれ、幸が可愛いのは事実なんですけどね。


*1:原作ではもう1人出てくるらしい