適当な日常を綴る’

明朗・潑溂・無邪気なブログ

スロウハイツの神様

ある快晴の日。人気作家チヨダ・コーキの小説のせいで、人が死んだ。猟奇的なファンによる、小説を模倣した大量殺人。
この事件を境に筆を折ったチヨダ・コーキだったが、ある新聞記事をきっかけに見事復活を遂げる。
闇の底にいた彼を救ったもの、それは『コーキの天使』と名付けられた少女からの百二十八通にも及ぶ手紙だった。
事件から十年―。売れっ子脚本家・赤羽環と、その友人たちとの幸せな共同生活をスタートさせたコーキ。
しかし『スロウハイツ』の日々は、謎の少女・加々美莉々亜の出現により、思わぬ方向へゆっくりと変化を始める…。


辻村深月を読んでみようと思い立ち、何やら読む順番なるものがあると知る。
その順番自体はいくつか挙げられていたのですが、だいたいが今作を最初に持ってきていたので、手始めに読んでみました。


タイトル通り(?)スローテンポな小説ですが、上巻の終わりから一気に物語が加速していくのが心地良い。下巻は気づいたら読み終わっていました。
中心部分はピュアな愛の物語なので、もう10年読むのが早ければ、と思う気持ちはありますが、それでも感動しました。ただ、ややオタク受けしやすい作品だとは感じましたが。


例によって全然頭を働かせずに読んでいたので、流石に「コーキの天使」の正体は分かったけど、狩野は驚いたな。というか本文に答えが書いてあったのに、意味がわからず読み飛ばしてた(
それにしても、最終章の伏線回収の鮮やかさよ。伏線回収が上手い作家、ってイメージだったけど、こういうことだったんですね。読んでて気持ちが良いし、読み返したくなりますね。


多少なりとも自分ごととして読むことができたのは、自分にとっての「チヨダ・コーキ」とはなんだろう、と思いながら読み進められたからかもしれません。
10代のある時期にハマるけど、次第に卒業していく。でも、自分の血肉になっている。多分、「時雨沢恵一」とか、「パロディアニメ」辺りが自分の「チヨダ・コーキ」なんだろうな。


あと、本筋と関係ないところだと、正義の「愛は、イコール執着だよ。その相手にきちんと執着することだ」が印象に残りました。
確かに、執着するような相手でないと、愛とは呼べないのかもしれない。他人への執着心が希薄なので、お説教されているような気分になってしまいました…。
でも、「あらゆる物語のテーマは結局愛だよね」で締めるのは綺麗だよなあ。こういう対応をかっちりさせるのがこの人の作風なのかも、とか思ったり。