本書は、「動き」のデザインに関する新しい方法論を示すものです。プロダクト、デバイス、ロボットなどの人工物の動きの設計に携わるデザイナーやエンジニアに向けて、
またスクリーン画面上のさまざまな動きを設計するデザイナーやアニメーターに向けて、動きの観察とデザインの新たなアプローチを提供します。
そしてもうひとつ、動きのデザイン論という本書の主題の裏に、「リサーチ・スルー・デザイン(RtD)」と呼ばれる、
研究者(リサーチャー)自身がデザインの実践活動を通じて新しい知識の創出を図るという研究手法を詳らかにしています。
本書は、リサーチ・スルー・デザインを基本姿勢として行ったひとつの研究プロジェクトを、一冊の本の中に丸ごと記録するという未だ類を見ない試みです。
今年始めての小説以外の読書はこれになりました。別にデザイナー志望とか興味があるとかではなく、高校の同級生が本を出していたから買ってみたというだけなのですが。
「運動共感」という概念は初めて知ったけど、共感ベースの概念なので、門外漢でもイメージしやすく、小難しく捉えずに読み進めることができました。
というか、流石にこれが普通の学術書であれば手に取っていなかっただろうと思うので、研究内容と留学先での生活のエッセイのハイブリッドになったこの本には親しみやすさを感じましたね。
自分の中にある感覚を元にして「研究」をするの、相当な胆力が必要だと思うのですが、それらをエッセイ調の構成で追体験でき、楽しい読書体験ができました。
デザイナーの彼に対してこんなことを書くの、めっちゃ失礼なんですが、高校生の当時、彼がこんなにアーティスティックな感性を持っているイメージが全くなかったんですよね。
あまり関係ないけど今ふと思い出したエピソードとして、部室で「雪が溶けると何になるか」という問いに、自分が「春」、彼が「水」と答えたのを思い出しました。
でも、運動共感って、知(詩)的好奇心に立脚していたテーマだと思うし、この本の中でも書いてあるように、備わっていた知覚力をどんどん磨いていったのかな。
対談してた教授が言ってた通り、味わいがあって良い文章だと思ったし、彼が高校、大学、博士課程で書いていたブログの文章を今読み返しても、どんどん洗練されているように感じますし。
あと『In Praise of Shadows』、それこそゲームで得た知識で名前だけ知っている程度だったけど、本書を読んで興味が湧きました。近所の図書館に蔵書あるっぽいし、また借りてこようかな。
せっかくなので、もう10年くらい会っていないけど、一方的に同窓会的な気分に浸ろうと、配信トークイベントも観ることに。WBCとの二画面体制で、若干気を散らしながらではありましたが(
東大から海外留学してデザイナー、遠くに行きすぎて、最早、隣で部活動を共にしていたのは偽の記憶か?みたいな感じですが、話している彼は当時の記憶とあまり変わらないように見えました。
誠実な語り口に、彼の朴訥な人柄が出ている気がして。でも「起きながら夢を見る」みたいなパンチラインが出てくる辺り、世界を観る目…それこそレンズ?が違うんだなと思う。
自分はストレッサーをドッジボールの如く避けながら生きているので、自己対話の連続みたいなこの研究で、どうやって気持ちを切り替えているのか気になって、チャットで質問してみました。
「ストレスが多少かかった方が結果が出せるし、研究対象への興味と負けん気で動いていた」と強い回答をもらい、感服も納得もしました。匿名のしょうもない疑問に答えてくれてありがとう。