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明朗・潑溂・無邪気なブログ

洲崎パラダイス 赤信号 ★★★★★★★★☆☆

両親に結婚を反対されたため、連れ立って栃木から上京した義治と蔦枝は、どこへ行くアテもなく夕暮の浅草吾妻橋附近を歩いていた。
以前廓にいた好みで洲崎遊廓へ入り込んだ蔦枝は、一杯のみ屋"千草"の女将お徳に二人の職探しを頼み、蔦枝はお徳の店で働くことになる。
義治の方も、千草に近いソバ屋で働くことになるが覇気のない彼は失敗続き。だが女店員の玉子はいつも義治をかばってくれた。
ある日、蔦枝は田舎へ送金したいからと義治に給料前借を頼むが、返事に渋る彼を歯がゆがり、千草の馴染客落合に頼み込む。
当にしていた以上の融通を受けて落合に惚れ込んだ蔦枝は行方不明になった義治のことも意に介せず、落合の探してくれたアパートに引越す。


川島雄三監督作品は『幕末太陽傳』しか観たことがなかったので、有名なこれを。1956年公開。「洲崎パラダイス」というのは、今の木場あたりにあった赤線地帯らしい。
最初は溝口健二の『赤線地帯』みたいに遊廓を描いた作品なのかな?と思いながら観始めたのですが(オープニングもそんな感じだったし)洲崎の中は描写されないんですよね。
蔦枝が以前遊郭にいた、という設定が巧みで、生活難から今にも遊郭に行ってしまうのではないか、というハラハラ感がある。実際、大分蓮っ葉というか、軽い女だし…。
洲崎川が幾度となく描写されるのは、遊郭との境界、彼岸と此岸を指しているのが分かりやすい。飲み屋が遊郭に繋がる橋のそばにある、というのも良い設定。
義治は煮え切らないヒモ寸前のダメ男、という感じで、なんでこんなやつと…と思うものの、蔦枝を探して飲み屋に来た時の剣幕とか、さながらホラー映画でしたね。


題名の「赤信号」、洲崎遊郭の手前で止まったことから「赤信号」なのかな?と思ってましたが、検索してみたらいろいろな含意がありそう。
最後は一見ハッピーエンドっぽく終わりますけど、多分また同じようなことを繰り返すんだろうな、と予感させるようでもあり。合縁奇縁、というやつかな。