映画感想
コミュ障や見た目のコンプレックスごと肯定してくれる存在の大切さ、と文章にすると陳腐だし、実際、非現実的な展開はあまり起こらない、ひと夏の淡い恋物語。
自分が今作を観て一番感じたのは、「子供ゆえの無邪気さ、残酷さ」でした。
圧倒的な映像美がこの作品最大のストロングポイントではないでしょうか。特にパルクールシーンの躍動感。流石『進撃の巨人』のWIT STUDIOだなと感心しました。
同性愛を描いた作品でもあるんでしょうけど、デヴィッド・ボウイと坂本龍一の顔が耽美系なので汚さはなかったかな。むしろ異常な環境化での愛情といったほうが近そうだし。
ストーリーらしいストーリーがほぼ存在しないので、最初はどう観たらいいのか混乱していたのですが、結局は「考えずに感じればいいや」と開き直ることにしました。
最終回のラストシーンの後の描写については、期待した通りというか、張り詰めたような緊張感でワクワクしました。これを観るためにお金と時間を使ってるわけですからね。
恋愛ものとしては色々考えながら観たら楽しめたんだけど、流石にちょっと長くて疲れましたね。
学園祭でオチをつける構成は妥当かなと思うけど、これだけ制作にスポットを当てるなら、完成作品はもう少しちゃんと観たかったかな。
一番面白かったのは、原作の名台詞である「裏切り御免」を「裏切ってごめんね♪」みたいなテイストで使っていたところ。
観ながら思ったのは、思ったより「ロミジュリ」だな、ということ。身分違いの恋。
コーエン兄弟監督作品、「ダメ人間」が多く出てくるので、観ていてちょっと和んでしまうんですよね。
社会不適合者しか出てこないのでは?というほどダメ人間だらけなのに、なぜか愛おしい。
荒唐無稽なストーリーではあるものの、上層部の結論の出ない会議とか「案外こんなもんなんだろうな」と思ってしまう。
「炭鉱を舞台にした作品」というものは、日米問わず似たような筋書きになるのかも。
すごいと思ったのは、チャップリンの身体能力の高さ。目隠しでスケートするシーンはすごすぎるし、急カーブで横転した車から逃げ出すとか、体張ってるよなあ。
感動要素は今作みたいに「下積みが報われる瞬間」くらいカジュアルな方が、コメディのノイズにもならないのかな、と。
パロディの原点にはなるべく当たるのが、15年以上ぱにぽにアイコンを愛用する者の性(サガ)。
最初に怒鳴ってから優しく歩み寄りを見せるの、現代では典型的DVモラハラ男のやり口なのが面白い。80年前から人心掌握のメソッドって変わってないんだな。
始めて合奏した時の、あの感動。それがこのアニメの中に表現されていて、それが今作のほぼ全てではないだろうか。
群像劇なので、全員に少しずつきっちり出番が割り振られているんですが、逆にどの人についてもあまり深くは掘られないため、観た後には何も残らないタイプの作品。
ドタバタ度が前作より減った分ハートフル成分が増していて、でもそれを重視するなら他の作品観るよな…とも思うので、割と退屈だったかな。
台詞回しで笑わせてくるのが面白く、特に終盤の「また走った!」とか「ジョージです」辺りが好き。ナレーターのアナウンサーと老効果マンが良いキャラしてた。
この作品を簡単に総括するなら「ジェネリックアイカツ」と表現するのが一番わかりやすいかな、と。
エンディングがBUMP OF CHICKENなのに驚きました。多分、ハマった世代が親になって、子供と観に来たらハマる想定なんでしょう。
個人的には『鬼滅の刃』の劇場版よりも映画単体としての完成度は高かったと思います。期待値以上。
当たり屋を続けるうちに、後妻と主人公の間に奇妙な家族愛が育まれていく様子が面白かったです。『万引き家族』にかなり近しいものを感じたなあ。
日本軍とイギリス軍を繋ぐのが『埴生の宿』というのがすごく良かった。今作のキーの一つになっている「音楽の力」、こういうテーマ好きなんだよな。
言わんとすることは理解できるけど、勢い任せなところが見受けられるので、『リメンバー・ミー』とどうしても比べてしまうんですよね…。
一番印象的だったのは兄弟愛ではなく、北林谷栄演じる朝鮮人のおばあさんですね。最早セリフともつかない怪音波(?)を発していて、存在感が半端ない。
フィクションでの人の生死は、身も蓋もないことを言えば「虚構」なわけだけど、あのおばあさんの死は現実なんだよな…。観てよかったけど、しんどい映画でした。