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荒ぶる季節の乙女どもよ。 ★★★★★★★★★☆

荒ぶる季節の乙女どもよ。Blu-ray 第一巻

荒ぶる季節の乙女どもよ。Blu-ray 第一巻


夏クールで一番最初に観終わった作品はこれになりました。その次がフルバ。MIXはなんか来週配信になっていた。楽しめた作品だし、せっかくなのでつらつら感想を書いていきます。


文芸部に所属する女子高生5人が、部員の1人である新菜の「死ぬまでにしたいことはセックス」という発言をきっかけに、性について意識し始める、という導入。
1クールを通して、文芸部の5人が5人とも、「愛」に悩む様子が描写されており、飽きることなく最後まで楽しむことができました。
反面、生々しい性描写や下ネタにちょっと引いてしまうこともありましたが…。1話の『TRAIN-TRAIN』は爆笑したけど、まさか、最後の最後でそこを回収してくるとは。
岡田麿里構成作品を見ていていつも思うのですが、序盤のキャッチーさに関しては群を抜いてますよね。今作も、1話のインパクトはとても衝撃的で、次を観ずにはいられなかった。
毎週放送のTVアニメという形態において、次回への「引き」の強さはとても重要だと思うので、そこの手法は感心するところです。往々にして投げっぱなしになりがちなのも事実ですが。


最終話まで見て思ったのは、この作品で描かれていたのは、彼女らが感じていた「愛」は、「性愛」だったのか、それとも「友愛」だったのか?ということなのかな、と。
中盤、和紗と泉は晴れて付き合い始めましたが、新菜という強力なライバルの存在もあり、関係を進めようとする和紗。それに対し、泉は関係を急ぐことを嫌い、ぎくしゃくしてしまう。
最終話では、2人は同じ気持ちだったことが分かり、気持ちを通じ合わせる。「友愛」から発展した「恋愛」であって、「性愛」はあくまでその先にあるものだ、と。


結局「セックスがしたい」という発言からこの物語が始まっていて、だからこそ、恋愛と性欲は切り離せないもの、という前提が出来上がってしまっていたんですよね。
思い返せば、和紗が泉への恋心を自覚したのも、「どうしてもしないといけないなら、誰と(えすいばつを)したい?」という問いに対して、「泉」と答えたからだったわけで。
究極の選択に対する回答を根拠に恋愛感情を自覚したからこそ、恋愛には性欲がセットである、と思い込んでしまった。り香も道筋は違えど、同じ思考回路に陥っていましたね。

その思い込みが正されたのは、同じ景色、同じ色を見て同じ感情を覚えたことで、2人の間にあるのは性欲を前提とした感情ではない、と理解したからだった、と。
ちょっと理屈っぽい流れかな、とは思わんでもないですし、泉の和紗より菅原さんに性欲を感じる」は普通言わないだろ、マリー節だなwとか思いましたけど、上手いと思いました。


百々子の新菜への感情の爆発や、ひと葉がミロ先生に一矢報いたことに満足して「山岸先生」と呼び方を変える、という、エピローグを含めて切ない演出や…。
通して見ると、5人それぞれが悩む様子が絶妙なさじ加減で描かれていたように思いますね。どのキャラにも見せ場があった。百々子はちょっと予想外の方向から来ましたけど。



もう一つ、余談にはなりますが、最終話を見ていて面白いな、というか、文芸部を舞台にした作品ならではだな、と思ったシーンがあったので書き留めておきたいと思います。
真っ白に燃え尽きた、という話の流れで、ひと葉が「『白痴』かな、坂口安吾と言ったのに対し、新菜が「私はドストエフスキー派です」と返したシーンです。

ドストエフスキーの『白痴』のヒロイン・ナスターシャは、資産家・ロゴージンと一旦は結婚するも、主人公・ムイシュキン公爵のことが忘れられない。
せめてムイシュキンには幸せになってほしいと、将軍の娘・アグラーヤに結婚を勧めるうち、ナスターシャはムイシュキンと相思相愛になってしまい、遂には殺されてしまう。

…まあ、読んでる人には今更なあらすじなんですけど。何が言いたいかというと、ナスターシャと新菜の境遇、かなり似てるよなあ、と見ていて思った、ということです。
和紗の恋を応援する、と言いながら、結局は泉のことを好きになってしまった新菜。そんな新菜が、『白痴』はドストエフスキー派、と言ったのは、少なからず含意があったのかな、と。
一方、ひと葉は坂口安吾の『白痴』を例に出しましたけど、ひと葉が想いを寄せるミロ先生の愛読書は『堕落論』。こっちも、意味のある描写だったのではないでしょうか。



原作者の趣味全開、といった様相を呈していましたし、所謂学園もののアニメでは、リアルを綺麗に装飾するのが常道なのに対し、逆にリアルより生々しく、ドロドロした描写。
大分好みの分かれる作品だったなあ、とは思いますが、自分はとても楽しめました。枝葉部分で未回収の伏線ことあれ、マリー作品によくある消化不良感もなく。
人に勧めたら色々と良識を疑われそうではありますが、こういう制作者の主張120%、みたいな作品はとても好きなので、3ヶ月楽しませてもらいました。好きなキャラは…ひと葉かなーやっぱw