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明朗・潑溂・無邪気なブログ

めし ★★★★★★★★★☆

「感情をベタつかせて、無意識に他人に迷惑をかける人間は大嫌いだなあ」


めし

めし

  • 発売日: 2016/12/01
  • メディア: Prime Video

1951年のキネマ旬報ベスト・テン第2位。成瀬巳喜男の名作。
大阪で暮らす倦怠期のサラリーマン夫婦のもとへ、東京から華やかで奔放な姪がやって来て家庭の空気を乱すようになる。
いたたまれなくなった妻は姪を連れて東京へ家出するが、夫が東京に迎えに来て結局はまたもとの平凡な生活に戻る…。
日常生活の中での些細な出来事を、心の微妙な動きと共にきめ細かく捉えた秀作。
この作品をきっかけに成瀬は戦後からの長いスランプを脱し、次々に傑作を生み出していく。


一番有名な(主観)『浮雲』がイマイチ合わなかったので敬遠していた成瀬作品、とりあえず同じくらい知名度がある『めし』を観てみることに。
大恋愛の末結婚し、大阪で暮らすうちに倦怠期に入った夫婦の元に、家出した姪がやってきて夫婦の不和を生む、というストーリー。
タイトルの「めし」というのは、上原謙演じる夫が原節子演じる妻に「めしはまだか」としか言わない、というところから来ていて、秀逸なネーミングだと思いました。


女中のように家事をするだけの生活に辟易していると、自由奔放な姪が羨ましくなる。そして妻は実家に帰るわけですが、そこで妻が感じたものとは…。
ストーリーライン自体は夫婦がよりを戻すまでを描いた平凡なものなのですが、心情の変化、機微を描くのが本当に上手い。なんとも言えない居心地の悪さが伝わってくる。
言葉で語ることなく、シチュエーションで魅せるのがとても良いですね。最近の説明過多なフィクションに慣れているから尚更。終盤で色々なことに気付くシーンも、無駄なセリフは一切ない。


原節子、小津監督作品だと聖女のようで、黒澤監督作品、というか『白痴』では魔女のようで、とにかく人間離れした存在感なのですが、今作では良い意味で「疲れた主婦」でした。
かと思えば、実家で見せる笑顔は別人のよう。杉村春子も出てくると安心感しかないな。相手を下げずに娘を諭すのが良い。そして小林桂樹の冒頭のセリフはスカッとジャパン。


それにしても、これがキネ旬で2位って、1位は何だったんだろう?と思って調べたら、小津監督の『麦秋』だったという。原節子無双かよ。成瀬作品ももう少し観ていきたいですね。