適当な日常を綴る’

明朗・潑溂・無邪気なブログ

幸福路のチー ★★★★★★★★★☆

アメリカで暮らすチーの元に、台湾の祖母が亡くなったと連絡が入る。
久しぶりに帰ってきた故郷、台北郊外の幸福路は記憶とはずいぶん違っている。
運河は整備され、遠くには高層ビルが立ち並ぶ。同級生に出会っても、相手はチーのことが分からない。
自分はそんなに変わってしまったのか――。チーは自分の記憶をたどりはじめる。


公開当時に話題になっていたけど、田舎暮らしでは観る手段もなく、スルーしてしまっていた今作。配信にあるのを見つけたので、ありがたく観ることに。
1970年代に台湾で生まれ育ち、現在はアメリカで暮らしている主人公の女性・チーが、祖母が亡くなったことをきっかけに台湾に帰国し、当時を回想する。
おそらくアニメファンの大半は感じたと思うのですが、台湾版『おもひでぽろぽろ』といった感じでしょうか。回想と現実の出来事が交互に描かれるところがよく似ている。
ただ、特に大人時代の回想と現在の出来事は、チーの見た目が同じなので混乱したし、幼馴染のベティの回想まで混ざってきたからちょっと分かりにくかったですね。


1970年代~2000年代を生きてきた、1人の女性の半生を振り返る、という作劇の中に、「70年代からの台湾史を振り返る」というテーマが内包されており、これがなかなかに重い。
外省人と台湾人間の軋轢、学生運動民主化デモ、921大地震アメリカでの人種差別…等々。チーの祖母は台湾の原住民アミ族って設定なんだとか。調べてて陽岱鋼も同じルーツなのを知った。


貧しい家庭の両親から医者か弁護士になるよう期待されるも、文学部を志して民主化運動に参加し、9・11がきっかけでアメリカで働くようになり、そこで知り合った男性と結婚。
実話ベースの物語というだけあって、わかりやすいハッピーエンドではないし、むしろ道中も辛い展開の方が多いくらいだったので、決してエンタメ性は高くない。
それでも不思議と感動してしまうのは、半生記を観ながら、どこか自分の人生と重ねているからなのかもしれない。「何を信じるかでどんな人間かが決まる」、いい言葉ですね。