適当な日常を綴る’

明朗・潑溂・無邪気なブログ

推し、燃ゆ


現代小説って全く読まないのですが、無料なら聴いてみるか、と思って去年話題になっていたこれ。推し活、という分野なら、多少なりとも共感ができるのかも、と。
主人公・山下あかりの推しスタンスは、いわゆる「ガチ恋」ではなく、推しの全てを理解、解釈しようとするというもので、高校生でこれはすごい熱量だな…とちょっと感心。
ただ、それが故に生活は破綻していて、しかも発達障害。この発達障害の描写が妙にリアルで、更に家庭環境も毒親っぽい。でも父親が女性声優にリプライ飛ばしてたのは笑いました。


共感できたポイントとしては「有象無象のファンの1人でありたい」という点。でも、あかりはあれだけの熱量を推しに注いでいるのに、この境地に到れるのはすごいよな…。
ラストで、推しが暮らしているであろう部屋を見て、決別するシーンも印象的。「偶像」だからこそ好きなのだ、一定の距離を保ちたい、という感覚、とても理解できる。
でも「推しが自分の背骨」と言えるまでのめり込んだことはないので、やはりあそこまで行ってしまうと危ういよなあ。感情移入すると辛くなるだけ、というのは身に沁みて分かっているだけに。
そういえば、骨というか、肉体の描写が上手かったので、そこの文学的表現は割と好きだったかな。意外と人間って死ねないものだし、生理的反応って感情ではコントロールできないものだよな。


総評して、ものすごく面白かったというわけではないけど、改めて、推しとの距離感というものを考えさせられる本でした。たまには現代小説もいいですね。