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響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章 前編・後編


やっとスピンオフ以外の本編を読み終わったし、感想を書こうかな…と思ったら、まず2年生編の感想を書いてなかった。


リズと青い鳥』そして『誓いのフィナーレ』の原作、と言える2冊。映画を先に観ていると、「こういう風に取捨選択して映画にしたのか」という再構成の手腕に感心するところあり、
また「映画ではカットされてたけどこんな名シーンあったのか」という発見もあり。例えば夢ちゃんの話とか、加部ちゃん先輩の話とか…。やはりどちらにも触れるのが一番ですね。


まず感じたのは、京アニがこの2年制編を2作品に分けて公開したのも分かるなあ、と。パンフレットで監督が「1つの映画にするのは難しいと思ったので分けた」と仰ってましたが
第2楽章は、主人公である黄前久美子と低音パートとなかまたち」という側面と「希美とみぞれ」「優子と夏紀」のような3年生の物語という側面があり、同時に描いてまとめるのは難しい。
特に今年度のコンクールの主力・みぞれと、それに大きな影響を与えており、また与えられていた希美の存在は大きく、ここにスポットを当てて映画化したのは大正解だったのではないかと。
実は青い鳥がみぞれだったのだ、という気付きと、それによってみぞれの演奏にブレイクスルーが起こるところは映画でも舌を巻きましたが、小説でも感動的でした。


そして、映画を観た原作ファンが、当時物足りなさを感じていた理由も少し分かりました。上述した「主人公の物語」及び「希美とみぞれの物語」については、それぞれ『誓いのフィナーレ』と
リズと青い鳥』で描いている。『誓いのフィナーレ』の終盤では先輩の夏紀と後輩の奏との間に生じた亀裂を久美子が収め、ユーフォパートの絆も描いている。では、何が足りないのか?


…と、別に勿体つけて書くほどのことでもないんですが、「吉川優子の物語」が不足しているんですよね。
シリーズ通して読んできて、もちろんみんな好きなキャラクターではあるんですが、自分の思い入れが最も強いキャラクターは、と考えると、やっぱり優子かなあと。
1年生の時に同級生が大量に退部し、2年生時は敬愛する先輩と実力のある後輩とのソロ争い。それを経て部長に就任し、「後輩たちには自分の世代のような苦労はさせたくない」と
部内の和に心を配り、同時に強烈なカリスマ性で部を引っ張っていく。早い段階で久美子を幹部にすると決め、積極的に経験を積ませようとしていた先見の明。…挙げだすとキリがない。

「こんな部長いたら頼もしいだろうなあ」と思える、部長向きなキャラクターであると同時に、脆さも併せ持っている。そしてそこを中川夏紀という存在がフォローしている。…完璧ですよね。
2年生の吉川優子について知っているからこそ、3年生の吉川優子に心打たれるわけで。実際、この作品ってそういう伝記的な性格も結構強いと思います。


…だからこそ、『誓いのフィナーレ』が奏の「悔しいです」を結論に持ってきたことで、「優子の物語」の要素は薄まってしまった、という指摘には共感するところがある。
第二楽章は、久美子の低音パートだけでなく、様々なパートに色濃いドラマがあり、それが大きな魅力。だからこそ他にも色々観たかった、と思うのはやっぱり贅沢なんでしょうか。


読んでいるといつも学生当時を思い出すのですが、吹奏楽部の2年生って楽しい時期ですよね。入部してほどなくコンクールの時期になり、わけがわからないまま過ぎ去っていく1年生。
最高学年である責任と、受験のプレッシャーを抱えつつ後輩にも気を配らないといけない3年生。2年生という時期は、その中間にあって、一番無心で部活に専念できた時期だったかも。
上世代も下世代も優秀で、っていうところに当時の自分を重ねてしまうからこそ、2年生世代が好きなのかも、とも思いますけどね。…久美子世代、強すぎて直視できないからな(