アニメも始まるし、タイムラインで少し話題になっていたので読んでみよう、の精神。ちょうどネカフェがある大都会に出てこれたので、この機会を利用しようということで。
貧しい家庭からファッションデザイナーを目指す主人公・都村育人と、パリコレにモデルとして出演することを目指すヒロイン・藤戸千雪の2人が、ハンデを乗り越え、夢を叶えようとするお話。
まず、掲載誌がマガジンであることに驚きました。少女漫画だと思ってた…。ジャンプとかサンデーよりはまだ連載してそうではありますけど。
『ご近所物語』や『パラダイスキス』等、ファッションを題材にした作品って、大体が恋愛要素もメインにしているイメージがあって。でも、今作は必ずしもそうではない(ゼロではないけど)。
家庭も裕福で、端麗な容姿、ストイックな努力家、オーラもある…と、ショーモデルに必要とされる要素を持ち合わせながら、一番必要な「高身長」を持ち合わせていない千雪。
対して、デザイナーとして天才的な才能を持ち合わせていながら、母子家庭で4人兄弟の長男。母も過労で倒れ、妹3人の学費を捻出するため、専門学校と夢を諦め、就職しようとする育人。
「才能」と「環境」のどちらか片方を持ち合わせていない2人が、共に高め合いながら夢を追いかける、という、割と少年漫画的なエッセンスを持った作品なんですよね。
「ランウェイで笑って」というタイトルも面白い。ふつう、ランウェイでは笑ってはいけない、という事実。意識したことはなかったですが、確かに言われてみればそうですね。
その「ありえない」を実現させようとする2人の物語である、ということを端的に表した良いタイトルだと思います。このタイトルのせいで、読み始めた時は千雪が主人公かと思ってたけど。
育人が、数々の困難に直面しながらも、才能と創意工夫で道を切り開いていくのは読んでいてとても面白く、確かに少年漫画だな、と実感しました。
それと同じくらい好きなのが、凡人への描写。道半ばでショーモデルを諦めたマネージャーの優や、コネ入社から自分の立ち位置に悩む美依が特に印象的でした。
「やれることを好きになるのは、出来ないことを好きで居続けるより100倍簡単」とは優の言葉ですが、その通りだと思います。できない、負けるのは悔しい。
それを乗り越えて続けることができるのも一つの才能なのかもしれないですけど、向いている、勝てるものを続けていれば好きになるのも事実ですからね。
あとは「コネ」問題かな。柳田が言うように、コネを使ってでもその後成功できるかが重要、というのは正しいと思うし、事実そういう業界なんじゃないかという気もする。
コネクションがあるということ自体も一つの資質だし、それだけで成功できないのも確かだし。それは美依の描かれ方をみているとよく分かる。
13巻で美依について掘り下げられていて面白かったんですが、逆に、失敗が続くと自分が努力してなかったかのように錯覚してしまう、ということもありますよね。
『ユーフォ』の映画の感想で似たようなことを書きましたけど、結果が出たから、努力が遡及的に認められただけではないのか?という重いテーマ。
個人的には、結果が出てないのは努力と言わない、みたいな論調は自分に跳ね返ってきて息苦しくなるのであまり賛成できないですけどね。久美子に同調したい。
どうでもいいですが「佐久間美依」って文字列に既視感あったけど、佐久間まゆと牧野由依から取ってるのでは??作者のpixivにデレの画像もあったし可能性ありそう。
ここまで読んだ限りだと、今のところ育人に比べて千雪がまだコネの域を出ていないと思うので、ここからどうショーモデルまで行くのかが気になりますね。
読者モデルとかで手堅く成功するのがリアルな気はするんだけど、それだとこの作品の根本が揺らぐから流石にないかな。週末に新刊が出るらしいので、Kindleで買おうかと。