適当な日常を綴る’

明朗・潑溂・無邪気なブログ

デーミアン

1週間疲れたし、スープでも飲んで休養しよ…と思って適当にレシピ検索してたら「塩1.5g」を「塩15g」と見間違え、野菜入り高濃度食塩水を生成しました。皆も判断力の低下に気を付けよう。

些細な嘘をついたために不良に強請られていたエーミール。だが転校してきたデーミアンと仲良くなるや、不良は近づきもしなくなる。
デーミアンの謎めいた人柄と思想に影響されたエーミールは、やがて真の自己を求めて深く苦悩するようになる。
少年の魂の遍歴と成長を見事に描き、世界中で“悩める若者たち”に読み継がれる青春小説。


典型的ビルドゥングスロマンを三十路になってから読むやつ。まあ、『車輪の下』は10代で読んだからセーフか。当時は結構感銘を受けた記憶がありますね。
まあ、あれはハンスがエリート校に入学してアイデンティティに疑問を持つ、という筋書きに多少なりとも共感するところがあったというのが大きいと思いますが。
ヘッセはこの2作が有名だけど、クジャクヤママユの標本を潰してしまう短編のおかげで、実は日本人が読んだことある海外作家ランキングなら1、2を争う可能性すらあるような。


温かい家族に庇護されていたエーミールが自立していくにつれて苦悩し、葛藤を続けながら成長していく。とても楽しめたけど、やはりもっと若い頃に読めばより共感できたかも。
いつものことだけど、ヨーロッパ文学は宗教や思想についてある程度知識がないと、その手の考察に紙幅を割いている箇所を斜め読みしがちになってしまう。ニーチェ、挫折したしな…。


「カインのしるし」の解釈の話を、キリスト教的な考えが根付いている世界で子供時代にされたら、その対象に心酔しない方がおかしいくらい。
そして、それを読んでいるであろう思春期の読者にとっても「カインのように生きる」というフレーズは甘く魅力的であり、更に読み進めていくとそれがとても難しいことを知る。
それに伴って、エーミールと共に内省を深めていく…という恰好で、アイデンティティを確立せんとする年齢層にこれだけ深く刺さる小説もないでしょう。


ただ、この年になって読むと、知識を蓄え、内省を深め続けながら、そこから先に進もうとしないがために「ロマンチスト」と喝破されるピストーリウスに愛おしさを感じてしまう。
知識や真理を追い求めることと、それを実行することとの間には大きな隔たりがあるんだよな…と、読んでいてとても耳が痛いところでもありました。きっと何者にもなれないお前たち。


あと「鳥は卵から出ようともがく。卵すなわち世界なり。生まれんと欲する者は世界を破壊するほかなし。鳥は神をめざして飛ぶ。神の名はアブラクサス」の一節、どうにも聞き覚えがあって。
調べてみたら、『少女革命ウテナ』でこのフレーズが引用されていたらしい。だから既視感があったのか…。『愛はさだめ~』といい、何でもオタクからポロロッカしていくのが悪い癖。