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映画 さよなら私のクラマー ファーストタッチ & さよなら私のクラマー ★★★★★★★★☆☆

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先日、有給を取って映画を観に行ってきました。映画がアニメ版の前日譚、という位置づけなので、まとめて感想を書くことにしました。

女子中学生サッカープレイヤー・ 恩田希は、
誰よりも練習し、誰よりも努力してきた。
それでも、彼女は試合になかなか出してもらえなかった。

藤第一中学校、男子サッカー部──。
それが、彼女の今いるフィールドだ。

中学2年生となった希は、監督に「新人戦の1回戦に出たい!」と何度も願う。
その理由は、対戦相手にあった。

一緒にサッカーを続け、小学4年生で転校していった、
幼馴染の“ナメック” 谷安昭がいる、江上西中学校なのだ。

「サッカーはフィジカルだ。身体のデカイ俺に、女のお前が敵うわけがない。
男というだけで俺は──お前を超えたレベルにいるんだ」

再会したナメックから受けたその言葉を、
希は試合に出て、勝つことで、はねのけたかった。

「上等だわ。見せてやろうじゃない。私に何ができるのか」


初出場の対外試合で当たり負けして打撲し、それ以降公式戦に出してもらえなくなった主人公・恩田希が、努力を続けて試合に出ようとする…というのが映画のお話。
「性差」を描いた映画、というのが一つの特徴になっているかと。男女の体格差もそうですが、そもそも女子サッカー部という存在自体のマイナーさもそう。
それに加えて印象的だったのが、テレビで希が食い入るように観ていた憧れの選手は、女子サッカーのプロ選手ではなく、ユーロのスター選手であった、というシーン。
サッカーをしている女子学生も、プレーし続けているイメージがないから学生限りで辞める、という人は少なくないらしく、根の深い問題なんだな、と…。


3DCGでピッチを俯瞰し、縦パスが繋がるのを上手く魅せる試合シーンは面白かったですね。ああいうリソースは劇場だからこそ割けたんでしょうけど。
希が見せるエラシコシザース、ルーレットといった技巧も見ごたえがあり、中盤にこんな選手がいたら面白いだろうなー、と。


ストーリー面でいうと、「男子みたいになろうとするんじゃなくて、自分らしくプレーすればいい」と思い至って吹っ切れた希。
それに対して、「希の影を追い続けていたけど、自分は自分だ」と思い至って吹っ切れたナメック。両者の対比はシンプルながらに良かったと思います。
逆に、それ以外は主人公が練習して試合出場を目指す、というオーソドックスなものだったので、そこまで特筆すべきものはなかったかな?


…ただ、どうしても気になったのが、希が試合に出るために使った手段。原作通りなんだろうけど、普通に反則だし、テーマ自体を毀損してるような。弟が可哀想すぎるし。
あの監督も、試合に出た希を交代させずにプレーさせるくらいだったら最初からベンチに入れてワンポイントで出せよ、って思ってしまった。盛り上がり重視なのはわかるけど…。



…さて、こんな感じで映画は予想以上に楽しめたし、テーマ性もある良作だと思っているのですが、先に観たTVアニメ版の感想も書いていきたい。
もともとこの作品、新型コロナウイルスの影響で延期しなければ、4月頭に映画が公開され、その後にアニメ…という流れだったはずで、これが非常に痛かった。
映画はアニメ版の前日譚なわけですが、正直な話、TVアニメ版だけ観ても作品の妙味が伝わってこない。自分は1クール観てきてそう感じました。


映画で希の挫折と苦労、努力を知ってからアニメを観ないと、最終話の「サッカーはみんなでやった方が楽しい」の印象がぜんぜん違ってしまうと思うんですよね。
映画の視聴が前提になるアニメ自体に自分はやや否定的ですが、今作について言えば、アニメ版だけ観るとエンタメ的にはなかなか厳しい作品、と言わざるを得ない。
試合シーンの作画が厳しいのはひとまず置いておいても、長い尺を取って描かれた2試合が0-20、0-2の敗戦で終了、というのはスポーツアニメの文法としては異色でしょう。
展開としてはここから面白くなっていくんだろうな、というのが感じられるだけに、ここで終了というのは残念すぎる。カタルシスを感じづらいスポーツアニメ、という異端。
かといって急に監督の過去のエピソードを挿入したり、日常回や回想に尺を割いたり。極めつけに最終話Cパートのメッセージ。「結局何がやりたかったの?」という印象は拭えず。


…いや、正直に言うと、「何がやりたいか」はすごく分かりやすいし、メッセージ性は強かったんですが、ストーリーそのものの面白さがあってこそだよね、という。
「強い選手が弱小校で燻っていたら女子サッカーが終わってしまう」という危機感を持ってプレーしていた千花。現役学生に背負わせるにはあまりにも重い業ではないのか。
映画、アニメと観てきて、作品として言わんとすることは伝わってきたけど、公開延期を含め、色々と惜しい作品だな、というのが総合的な評価ですかね。


そういえば、映画の特典に意味不明な描き下ろし漫画と日向坂の影山優佳さんのインタビューが掲載された冊子をもらったんですが、インタビューの内容がとても良かったです。
自身の経験を踏まえながら、女子サッカーの展望やサッカーそのものについても深く語っていて、読み応えがありました。サッカーがすごく好きなのが伝わってきた。
そんなわけで、映画は★9、アニメは★7で総評して★8くらい。テーマ性の強い作品が好みなのでちょっと甘めだけど、ここで切られるとこれ以上の評価は難しいかな…。