適当な日常を綴る’

明朗・潑溂・無邪気なブログ

生きがいについて

「いったい私たちの毎日の生活を生きるかいあるように感じさせているものは何であろうか。ひとたび生きがいをうしなったら、どんなふうにしてまた新しい生きがいを見いだすのだろうか」
神谷美恵子はつねに苦しむひと、悲しむひとのそばにあろうとした。本書は、ひとが生きていくことへの深いいとおしみと、たゆみない思索に支えられた、まさに生きた思想の結晶である。
1966年の初版以来、多くのひとを慰め力づけてきた永遠の名著に執筆当時の日記を付して贈る。


精神科医の著者が、瀬戸内海のハンセン病医療所で医療活動に従事する中で、患者への聞き取りを元に「生きがい」について綴った本。
似たようなベクトルの本としては最近『夜と霧』を読みましたが、こちらの方がより読みやすく、共感できるところが多くあった上に、気付きも与えてくれる本でした。


本の構成としては、最初に「生きがい」の定義、特徴について論じ、生きがいを奪い去る要因について論じ、生きがい喪失者の心の動きについて論じ、
新しい生きがいを求める流れ、そしてどのように新しい生きがいを発見するかを論じた上で、精神的な生きがい、心の世界の変革について論じる、という感じ。


ハンセン病患者に取材しているだけあって、生々しい絶望の声が綴られていることもあれば、逆に、今の自分よりも生きがいを感じているんだな、と思うような記述もある。
自分も、もし今後、体が動かなくなるようなことがあれば、実感を持って後半が読めるようになるのだろうか。折に触れて、読み返したいですね。


ひとは自分が何かにむかって前進していると感じられるときにのみ、その努力や苦しみをも目標への道程として、生命の発展の感じとしてうけとめるのである
この辺りの記述はかなり腑に落ちました。必ずしも生活上の必要がなくても、目標に向かって歩み、努力を要する課題に取り組む中で生きがいが生まれることがある。
家で何をするともなく時間を潰している時は楽だけど、どこか空虚でもある。適度にやりたいことがある、やりたいことをやっている状態が心地良いんですよね。


後半は宗教との関わりについて紙幅が割かれていたので、あまり実感を伴わなかったけど、他にも感銘を受けた箇所がいくつもあり、名著と言われる理由がよく分かりました。
ショーペンハウアーの『幸福について』と並んで、愛読書にしたい1冊に巡り会えたかも。今回は借りたけど、ちゃんと文庫で買おうかな?