適当な日常を綴る’

明朗・潑溂・無邪気なブログ

ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。

地元を飛び出した娘と、残った娘。幼馴染みの二人の人生はもう交わることなどないと思っていた。あの事件が起こるまでは。
チエミが母親を殺し、失踪してから半年。みずほの脳裏に浮かんだのはチエミと交わした幼い約束。
彼女が逃げ続ける理由が明らかになるとき、全ての娘は救われる。著者の新たな代表作。


講談社文庫の「辻村ワールドすごろく」無事ゴールしました。2ヶ月で15冊。社会人になってからこのペースで本読んだの初めてだな。
普段よく読む人文・歴史系の本とか古典文学とかに比べたら読みやすさが雲泥の差なので、単純に冊数では比べられないわけですが…。


まず、今まで読んだ講談社文庫の作品とは全く登場人物が共通していない、独立した作品でした。読む順番が最後になっているのはそういうことか。
もう1つ、今まではほぼ学生が主人公だったところ、アラサー女性の確執が描かれていて、急に対象年齢が上がったのにも驚いた。今までより重い話だった…。


辻村作品を薦めてくれた友人が「対象年齢が高い作品のほうが面白い」と言っていた意味が分かったというか、30代が読むなら、こういう近い世代を主人公にした話の方が共感度が高いですね。
スターシステムが大好きな、少年の心を忘れていない自分としては、ジュブナイルものも面白いと思うんだけど。そもそもジャンルが違いますよね。


殺人の謎については終盤に明らかになりますが、その辺はあまり重要なポイントではなさそう。ミステリの皮をかぶった、アラサー女性と結婚の話だからな…。
学生のエピソードを読んでいる時は「女社会ってめんどくさいなー」くらいだった感想が、もっと強烈になった感じ。自分が男性の平均より更に人間関係に疎いのもありますが。


それより、一番刺さったのは亜理紗だなあ。進学校から有名大学に進学し、資格を取って、男社会で正社員として働く亜理紗には、地元で契約社員をしているチエが許せない。

「何故、私が望月さんに苛立ちを感じるのか。そのルーツが分かった気がしました。自分の人生へのモチベーションが低過ぎる」
「自分の人生の責任を、人に求めて不満を口にして終わり。そんな生き方、楽じゃないですか。与えられるものを待つだけ、自分で選ぶのではなくて、選ばれるのを待つだけなんです」


自分の職場にも、チエみたいな立場の人っているし、もっと言うと4大を出ていても、自分より頭の回転が遅いなあ、と思う人に対して、無意識に下に見てしまうことはあるかも。
今までの人生で、自分と同じか、それ以上に頭の回転が速い、聡明な人間と付き合ってきた期間が長かった影響なんでしょうけど、多分、理解はできても共感はできそうにないなあ。
そういう、言葉にできない歪みみたいなものを、小説という形で描けてしまう辻村作品はすごいな、と思いました。対象年齢高めの作品も、これからいくつか読んでいきたいと思います。

『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』
『冷たい校舎の時は止まる』
『朝が来る』
『鍵のない夢を見る』で直木賞


辻村深月(★4)


多分、今作がQMAで出るのは連想だけ?これも一回ヒント差し替わってるし、自分もプレーしなくなって久しいので『かがみの孤城』とかになってるかもしれませんが。