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ジョゼと虎と魚たち ★★★★★★★★★★

ジョゼと虎と魚たち [DVD]

ジョゼと虎と魚たち [DVD]

  • 発売日: 2018/12/21
  • メディア: DVD


「帰れって言われて帰るような奴は早よ帰れ!」


マージャン屋でバイトをするごく普通の大学生の恒夫。
最近麻雀屋で近所の婆さんの話題が噂になっていた。
「あの婆さんは運び屋で乳母車の中は大金?麻薬?」そんなある日、恒夫は坂道を走ってくる乳母車と遭遇。
中をのぞいてみるとそこには包丁を振り回す少女が。
それが恒夫とジョゼの出会いだった。
恒夫はそんな不思議なジョゼに惹かれてゆく・・・。


年末にアニメ映画が公開されることを上映前の予告で知り、そういえば確かこのタイトルって上野樹里が出てたよな、と。割とハズレがない女優だと思っているので。
まず観ておくのも悪くないかな、と思ってレンタルショップで借りてきました。…ヒロインは池脇千鶴だったし、上野樹里が若くて最初誰かと思ったけど。


彼女もいるけどセフレもいる、だらしない大学生の恒夫が、足の不自由な少女・ジョゼと出会い、徐々に惹かれてゆく。
最初は「よくある「難病と恋愛」をテーマにした類の作品かな?」と思いながら観ていたのですが、ストーリーが進んでいくと、必ずしもそうではないことに気付きました。
恒夫はジョゼを「障害者」として見ていない。それは気遣いをしていないということではなくて、不必要に特別扱いをしないということ。
一方で、周囲のジョゼを見る目は、完全に障害者に対するそれ。ジョゼと暮らすお婆さんは、完全にジョゼを腫れ物扱いして、近所の人には一人暮らしだと嘯いているし。


一方、ジョゼから見たら、恒夫は牢獄のようなあの家から連れ出してくれた、神のごとき存在なわけで。
二人の間の恋は、しかし将来添い遂げるほどの愛情ではなかったと。終盤の展開には唸らされましたが、この結末も、恒夫がジョゼを特別扱いしなかったことの証左なんですよね。
障害を持つ女の子との恋愛、という無意識のバイアスで作品を観てしまっていたれけど、実際は大学生の若気の至りとも言うべき、普通の恋愛模様でしかなかった。面白い構成だと思いました。


面白かった一方、これを現代の価値観でアニメ化するとなると、一体どうリファインされているのかは気になるところ。
「障害者の彼女連れて帰ったら親も喜ぶやろ」みたいな、絶対令和では許されないセリフとか価値観も散見されたし、ジョゼのあの閉塞感も、現代のネット社会では不自然な気もするし。
正直、すごく好みな作品、というわけではないのですが(ビターエンドだし)、邦画の青春映画というカテゴリの傑作であることは間違いないと思うので、最高評価にしておこう。