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クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園 ★★★★★★★★★☆

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前作は時間が空いていたのでたまたま観に行ったのですが、今作、やたら評判が良かったので、実際どれくらい面白いのか確かめに行くことに。
エリート学校・天カス学園に体験入学したカスカベ防衛隊の面々が、学園で起こる怪事件の謎を解く…というミステリーモノ。


まず、ミステリ要素がなかなかに秀逸。お尻を噛まれるとおバカになるという「吸ケツ鬼」の正体に迫る、いわゆるフーダニット。
容疑者は7人(意味もなく容疑者にされていたマサオくんを含めると8人)なのですが、ちゃんとそれぞれに動機がありそうな描写がされている。
物語が進むにつれて、1人、2人と容疑者候補の疑いが晴れていき、その上でのアニメの作画を利用した叙述トリックが見事。完全に騙されました。
今から思えば、序盤の何気ないあのシーンは伏線だったのか、と気付くし、意外に本格的でした。ホント、ミスリードが上手いので、思考が誘導されてしまう。


また、終盤は事件の犯人とかはどうでもよくなって、マラソンレースが始まるのですが、ここまでにミステリと並行して描かれる、風間くんのしんちゃんへの想いがまた素晴らしい。
手紙のくだりは完全に泣かせにきててズルかったですね。エリート街道を進まんとする風間くんは、しんちゃんとは遠くない将来に別れることを予感している。
サザエさん時空の『クレしん』シリーズでそのような時が描かれることはないだけに、来ることのない「終わり」に言及されるとハッとしてしまう。あれが彼らなりの「友情」の形なんだなあ。


もう一つ、「天カス学園」という究極の管理社会の弊害を描くことで「点数主義への警鐘」みたいなテーマもありましたね。教育的な側面もあって、隙がない。
アイデンティティを確立した中年には今更ではあるけど、子供たちがこれを観て、各々感じるものがあればいいんじゃなかろうか。炎上してたどっかのメンタリストも観た方がいい。
そういえば「大人が観ても面白い」でおなじみですけど、しんちゃんがジャイアント馬場のモノマネをするシーンは笑ってしまった。今の子供の親世代の更に親世代じゃないと通じなくないか?


声優ファン的な目線で言うと、チシオちゃん役の広橋涼さん。ハマり役でしたね。やっぱり広橋さんのこういう元気な役はいい。
あと、子供っぽい声じゃない齋藤彩夏さんが結構新鮮でしたね。観終わってからクレジット見て「え、そうだったの?」って驚きました。


そんなわけで、評判に違わぬ名作でした。今年観たアニメ映画は『シンエヴァ』『ポンポさん』の2強でしたが、『天カス学園』もそれに劣らない良作。お勧めです。
今思えば、前作の『ラクガキングダム』は変化球だったのに対し、今作はミステリ要素こそあれ、エモさという意味では直球だったのかも。これは、来年も観に行こうかな…。