つい最近まで「オドループ」って「受けループ」みたいな用語だと思ってました。オドリドリ使うのかな、とか。
タカラジェンヌの母をもつ一瀬蘭花(いちのせらんか)は自身の美貌に無自覚で、恋もまだ知らなかった。
だが、大学のオーケストラに指揮者として迎えられた茂実星近(しげみほしちか)が、彼女の人生を一変させる。
茂実との恋愛に溺れる蘭花だったが、やがて彼の裏切りを知る。五年間の激しい恋の衝撃的な終焉。
蘭花の友人・留利絵(るりえ)の目からその歳月を見つめたとき、また別の真実が――。男女の、そして女友達の妄執を描き切る長編。
図書館で借りたままにしていたところ、返却期限が今日だったことに気づいたので慌てて読むことに。
今まで電子書籍で読んでいたので、文庫本の分厚さにちょっと怯んだけど、読み始めてみたらそんなに時間はかかりませんでしたね。
あらすじに書いてある「妄執」という単語が、今作を端的に表していると感じました。
読み終わった直後に、「妻の葬儀に現れた妻の友人に一目惚れをした夫が、翌日自分の子供を殺害した。その理由は?」という有名なサイコパス診断を思い出してしまった。
今まで読んだ辻村作品は、ジュブナイルものが中心だった点を差し引いても、読者の共感ベースで読み進められる作品が多かったと感じていて。
それに対し、今作で中心に描かれている2人はあまりにもイカれている。激しい感情の波に流されながらの読書体験だったので、かなり毛色が違いましたね。
同じ時間軸のことを描いているのに、蘭花視点と留利絵視点ではこんなにも見え方が違うのかと。美波とかどう考えても善人なのに、逆恨みされるの怖すぎるだろ。
燃えるような恋愛感情を持ったことも、幼少期からの劣等感もどちらも持ったことがないゆえに、非現実的というか、浮世離れしたストーリーだな…という印象でした。
結末は「え、そっちなの?」って思ったけど、それなら、「恋」部分の後半部はちょっとミスリードを狙いすぎではないか。1人称だと本人がイカれてるから何でもアリか。
しかし、もちろん可哀想ではあるんだけど、自分の感覚では、留利絵は「友情」ではないと思うんですけどね…。利他心のかけらもない。おためごかしの極北でしょう。
女性同士の関係性を描いた作品というくくりで見れば、この前読んだ『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』の方が現実感があったぶん、楽しめたかな。
本編とは何の関係もないけど、平成をアニメオタクとして過ごした身からすると、無意識に「蘭花」は「ランファ」って読んでしまうし、声は田村ゆかりだし、モテなさそうだし。
でも、ググった感じ、同じ感想が全くなくて悲しい。令和になっても2期8話「ウェディングケーキ合体スペシャル」の魅力を擦り続ける旧人類であり続けたい。