映画感想
日本軍とイギリス軍を繋ぐのが『埴生の宿』というのがすごく良かった。今作のキーの一つになっている「音楽の力」、こういうテーマ好きなんだよな。
言わんとすることは理解できるけど、勢い任せなところが見受けられるので、『リメンバー・ミー』とどうしても比べてしまうんですよね…。
一番印象的だったのは兄弟愛ではなく、北林谷栄演じる朝鮮人のおばあさんですね。最早セリフともつかない怪音波(?)を発していて、存在感が半端ない。
フィクションでの人の生死は、身も蓋もないことを言えば「虚構」なわけだけど、あのおばあさんの死は現実なんだよな…。観てよかったけど、しんどい映画でした。
何度も何度も書いているのですが、日常系アニメでありながら、変わりゆく日常を描くことで、逆説的に日常の大切さを実感させてくれる今作が大好きです。
まとめると「テーマは悪くないしコラボも上手くできていたけど、子供向けアニメ映画の尺には物理的に収まらない厳しさが垣間見えた」というところでしょうか。
一個人である以上、真の公正は不可能だけど、なるべくバランス感覚は養いたいな。学生運動が社会生活に絡め取られてしまう今作を観ながら、そんなことを思いました。
1960年の安保改定と同年公開であるこの作品を通して、学生運動に対する諦めというか、結局社会に反抗しながらも別れなければならなかったカップルを描く。
公開されたのが1949年、つまり戦後4年であることを考えると、戦後日本の価値観の転換を促した、という側面が強く、実際プロパガンダ臭はありましたね。
普段の生活でも何でも、一度レベルを上げてしまうと、ダウングレードするのって難しい。
現実と虚構の曖昧さ、と書くと、どうしても「難解なのでは?」とか「単純な面白さに欠けそう」みたいな印象になりがちなのですが、今作は全くそうではないのが素晴らしい。
妻の悲しみと行動の重さ、前半の水汲みのシーンがあるからこそ効いてくる名シーンだと思ったし、それでも変わらず水汲みは続いていく…という終わり方も良かったです。
公開されたのが高度経済成長期の真っただ中であることを考えると、労働の尊さを説くのは大事だったと思うのですが、今となっては説教臭さが鼻につく部分もあり。
当時中学生だったようにはとても見えないテレサ・野田の色気と、作風に似合わずムーディーな主題歌だけが印象に残りました。
仕事でも家庭でも趣味でも、何か生き甲斐を見つけることが長く生きていく上では必要なんだろうか。長く生きられる保証なんてないけど、心に留めておきたいですね。
道子さんとの障子越しの別れのシーンとか、軍隊に突き飛ばされるところとか、アヒル先生を笑う生徒のカットとか、印象的な演出はいくつかあったけど全体的にはドタバタ劇。
離婚を受け入れられないレンコが、少しずつ両親との距離を感じ取り、大人になっていく様子を、映像で上手く表現していましたね。
日本人、朝鮮人、フィリピン人。どの立場の人間が正しいとか間違っているとか、そういう単純な話ではなく、立場によって見え方は変わる、という事実をひたすらに描いていく。
得体の知れなさに一歩引いてしまう心理に寄り添うように、やたら引きのカットが多いのが印象的でした。奥行きというか、縦の距離感がそのまま心の距離になるというか。
この時代に限ったことではなく、硬直化した組織においては、こういういじめや汚職、不健全な人間関係が形成されがちですよね。
武士道が「虚飾」であるのは確かでも、それによって成立している組織があるのもまた確か。そこから零れてしまった人間の悲劇、と言えるのかもしれません。
1部よりもアクションシーンが多くて見応えがあり、1部以上に映画館で観た意味がある作品でした。
キャラクター文芸をしっかりやりながら、スチームパンクの雰囲気も楽しめる。
原作でも恐らく山場なんだろうな、というところを映画化していたので、前作よりも良かったかな。
雄大な仁淀川、ひなびた土讃線。照りつける日差しに、湿度が高そうな雨。映画館の大きなスクリーンで「夏」を体験することができる、アトラクション的な要素が、1つの長所ではないかと。
今年観たアニメ映画は『シンエヴァ』『ポンポさん』の2強でしたが、『天カス学園』もそれに劣らない良作。お勧めです。
『きんモザ』シリーズのファンなら観てハズレはないのでは、という印象。
松五郎と親子との疑似家族モノとも言える展開は微笑ましかったけど、「吉岡さんとでも呼んで」は切ないなあ。
とにかく躍動感がすごい。序盤、オセオン市街地でロディを追いかけるシーン、デクの能力も相まって、完全に『スパイダーマン』でしたね。
重苦しい因習から解き放たれる女性、というテーマを描写するには必要だったのかもしれませんが、流石に150分は長く感じてしまいましたね。